許嫁 （上）【煉獄杏寿郎】【冨岡義勇】

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「許嫁」


―双方の親が、子供が幼いうちから結婚させる
約束をしておくこと。








私、藤山 紫にとって今年は「最後」の多い年。


十七年住んだこの屋敷も、
家族と一緒に迎える正月も、
慣れ親しんだこの苗字だって、今年まで。


新年二日目の朝からそんなことばかり考えて
少し憂鬱になる。




「紫、そろそろ支度を整えなさい。
あと一時間も経てばご挨拶に来られるのだぞ。」



障子に父の影が近づいてきたと思えば
そう早口に告げ、また屋敷の奥に消えていく。



広間ではせわしなく母や、叔母、従姉妹たちが
宴の準備をしているようだ。


藤色の地に
松竹梅の鮮やかな模様が施された正月用の着物と

金色の糸が織り込まれた帯を身にまとい、

薄く紅を引く。


髪は、、




「紫〜入るわね」



三歳上の菫姉さんは東京にできた美髪学校の三年生。

手際よく私の前髪にウェイブをつけ、まとめていく。

流行の髪型らしい。



「煉獄様にお会いするするのは夏ぶりかしら。
暑中見舞いにあれだけお菓子を届けてくだったもの、今回も相当期待できるわね！」



昨日の正月のご馳走を
嬉しそうに食べる姉の横顔を思い出しクスっと笑う



「姉さんったら、昨日もあんなに食べたのだから
今日は控えめにしてね。私まで恥ずかしいわよ。」


「うふふ でも紫もきっと煉獄様の目の前じゃ
食べるどころじゃないでしょうから、、
私が食べてあげるわよ？」




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