社畜の私は推しを守る力を手に入れられたらしい。Ⅷ (ページ20)

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第252話逃げちゃおっかページ20

貴女「ねぇ、マルコ？」

青い空と青い海と青い鳥
そんな世界が好きだ

マルコ「なんだよぃ」

今は独り占め

そういえばなんだかんだ私は
兄さんを独り占めしたがったり、まぁサボやルフィが増えてからはそうはしなくなったけど

自分で言うのもナンだけど独占欲は強い方だとコレでも思う

そして、そんな私のーー夫は

基本オヤジファースト、家族ファースト
自分のことは後回し

を、無意識に当然のように実行する家族馬鹿の仕事人間だ

それを、船にたどり着くまで独り占めとはなんとも気分がいい話だ

貴女「逃げちゃおっか」

バサリと羽ばたく音が1度

貴女「んで、私を逃亡先に置いてく、そうすれば少なくとも私が死んだあとの世話はしなくて済む。そうするとね、"家族の死"から逃げられる」

マルコ「…馬鹿言ってんじゃねぇよぃ…ッ」

貴女「じゃぁ私のことは忘れてね」

マルコ「は？」

貴女「多分五分五分だから」

母さんは私と兄さんを産んで直ぐに死んだ
それがあっても無くても私の残りの寿命は約2年

妊娠には十月十日ーーまぁ、さっくり言えば約1年
初産ーーしかも船の上で

耐えられる気がしない

マルコ「…忘れねぇよぃ。お前はおれの嫁で、おれたちの家族で、末の妹だ。お前がいくら予防線貼ったってなぁ、おれは、お前を諦めるわけにはいかねぇんだよぃ。少ねぇッてならたった一日でも、一瞬でも長く傍にいる、そうおれは決めてんだよぃ」

逃げてしまえば楽だ

悲しみから
悔しさから
やるせなさから

逃げて逃げて、迂回路を作ってーーそういうのは私の十八番(オハコ)だ

得意技だったーーはずなのに

貴女「馬鹿じゃないの」

マルコの言葉にこんなにも、喜んでいる

悲しんで欲しくない

願いはそれだけのはずなのに

私のことを覚えていて欲しいだとか、隣にずっといたいとか、モビーにずっといたいとか

同じようで似たような願いが何百も湧いてきて

貴女「馬鹿じゃないの…」

マルコ「馬鹿じゃねぇよぃ…、んじゃそんな釣れねぇ嫁さんにはちと寄り道が必要かねぃ」

貴女「え？」

マルコは何故か降下を始める

眼下には白鯨ではなく赤い船ーー赤髪のシャンクスの船だ

貴女「寄るの！？」

マルコ「赤髪に伝えてねぇんだろぃ？まぁ、酒もタバコも今はねぇ…見聞色で察知したのかねぃ」

貴女「なんで」

マルコ「あ？お前ェが言ったんだろうよぃ。"逃げよう"って」

貴女「…オヤジの船を降りる、の？」

マルコ「寝言は寝てから言えよィ」