夜空のソーダ割り【鉢屋三郎】

33* だってチキンだから ページ33

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校内を回っているうちに、短かった影も長くなり始めた。


いつもは鳴らない時間にチャイムが鳴り、文化祭1日目終了を知らせる。


生徒はガヤガヤと片付けを始めた。


私たちも片付けに教室に戻ろうとすると、校庭で何かを設営しているのが見えた。



「そう言えばAは後夜祭どうするの？」



校庭を見ている私に気づいた高屋が言う。


ああなるほど、後夜祭の設営か。


私の学校では文化祭両日ともの終わりに後夜祭がある。


よくあるような、男女ペアになってダンスをする。


恋する乙女は、念入りに身だしなみを整え、想い人からのお声かけを待ったり、思い切って誘ったり。


男子だって後夜祭にかけている人が少なくない。


カップルにとっては、ある意味文化祭よりも楽しみな行事ではあるのだが…。



「んー…出ないつもり…」


「いやあれ強制参加じゃん」


「一人いなくたってわかんないよ」



てきとーに教室にでもいようかな、と階段を登りながら言う。



「…鉢屋くん誘わないの？」



私は高屋の言葉にぐっ…と唸った。


こいつがこういう時に言わないはずがない。



「……誘わないよ」



ぼそりとそっぽを向いて返事をした。



だって親衛隊怖いし。


藍沢さんも怖いし。


…断られるの怖いし。



「誘わない、じゃなくて誘えない、でしょ？」



…悔しいがぐうの音も出ない。


黙りこくった私に高屋が鼻で笑った。



「どうせチキンですよーだ…」



教室はまだ片付けで賑わっている。




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