キャンディー・ボーイ【ONEPIECE】 (ページ10)

今日:19 hit、昨日:6 hit、合計:38,928 hit

愛囁 10 ページ10

*

サンジに話を聞かれていたかもしれない。

一番知られたくなくて、一番聞かれてはならない人物にバレてしまった。恐る恐るおれのいるベッド脇に腰かけたサンジは体調は大丈夫なのかい、とまず体の心配をしてきた。

今さらかよ...と思いつつ、思ったより大丈夫そうと答えた。

まぁ、半分痩せ我慢みたいなものだけど。

「Aちゃん、さっき...そのローとの邪魔したか？」

「＿＿＿別に邪魔じゃねェよ。知りたいことがあれば教えてやるし」

決心が鈍ってる、とローに指摘されたのは言うとおりだ。私が一番そんなの分かってる。だから、指摘されてちょっとムカついた

お前に言われなくても分かってるんだよ...自分がどれだけ利己的で中途半端な奴かなんて。

だから早く、手っ取り早く体さえ変えてしまえば自然と諦めもつくと思ってたのに...

あの様子じゃあ、ローはもうこの手の話に取り合ってくれそうにない。完全にフラれてしまったみたいだ。

でも、そのお陰でおれは別の決心が出来た。

「Aちゃん、おれは君のことが知りたいよ。」

「...おれの、こと」

「あぁ、おれは...おれたちは君のことをまだ何も知らない。君がなんで心が男なのかも、ローに何を頼んでたのかも」

ある意味咎めるようなその言い方に自然と自分の眉が下がる。
そりゃそうだ、ここに来るまでにルフィを初め、仲間達は信頼しあって助け合って旅をしてきた。

どんな過去だってお互いに背負って来れた。
なのに、おれだけがその信頼を裏切るように過去をひた隠しにしては、誰も頼ることもしなかった。

「おれじゃ、おれたちじゃ、役不足か...？！」

違う、という否定がカスカスの声になって自分の喉から漏れる。
おれはもう逃げはしない、嘘もつかない。

だから、サンジ＿＿＿＿
おれが全てを話終えたときから、どうかおれを女と見るのはやめてくれ。

もう、甘言も口説き文句も何も要らない。
おれはお前にたった一人だけ女扱いされちゃいけない女だから。

「話すよ...これまでのことも、自分のことも全部」

話したら最後、おれの想いは報われることがない。
でも、それでもいいんだ＿＿＿＿

サンジ、お前に会っておれは初めて"女"になれたから。