キャンディー・ボーイ【ONEPIECE】 (ページ13)

今日:1 hit、昨日:11 hit、合計:38,974 hit

愛囁 12 ページ13

*

サンジの目が私を捉えて離さない。

逃げようとしてもその真剣な目に逃げられそうになかった。でも、その目に見つめられて嬉しいと思ってる自分がいる。

...クソ、こんなの本当に女みたいじゃないか

このままじゃ、男になる決心をしようとしていたのに逆効果だ。サンジの気持ちは飛び上がる程嬉しいし、出来ることなら応えたい。

でも、過去に言われた父の言葉がそれを不躾に断ち切っていく。

「サンジ...お前の思ってるより父は強いし、おれは男として生きていかなきゃ存在する意味がないんだ」

「そんなの...誰が決めたんだよ」

私のサンジを拒絶するような言葉に、彼は青筋を浮かべて私をベッドへ押しつけた。ギシッとスプリングの音が鳴って、体が深く沈む。

自分の体とサンジの体が薄く重なりあって、心音がバクバクと音を立てた。
＿＿＿＿何やってんだよ、コイツ...！！

離せ、と言おうとしても緊張で声が出ない。コックの白くて綺麗な手がスルリと自分の頬を伝ってくぐもった声が漏れる。

チラリとサンジの方を見上げてみれば、真剣な眼差しが自分を見下ろしていて

好きだ＿＿＿＿という気持ちが沢山溢れだしてくる。
好き、どうしようもなく好き。

本当は自分もサンジに女扱いされたい、女性として見て欲しい。父親の存在なんかに縛られないで、真剣に一人の女としてサンジに恋したい。

それがどんどん湧水のように溢れだしてきて、遂にはサンジのYシャツに手を掛けていた。
ぐっ、と距離が縮まって彼の金髪がカーテンのように私の顔を隠す。

柔らかい唇同士が重なりあって、ゆっくりと離れる。隙間から撫でるように吹いてくる風がとても冷たく感じた。

「サンジ...好き」

おれみたいな奴が好きになってごめん、と付け加えてやろうと思ったのにサンジはそれを許さない。
好き、と自分は蚊の鳴くような声で言ったのにサンジは顔を真っ赤にして必死に私の唇を貪った。

いつもの紳士的な態度とは真逆の情熱的なキスに頭がクラクラする。
女になればサンジはこんな風に自分を愛してくれる。それが悲しくも、嬉しくもあって咄嗟に彼の首に手を回す。

何分か互いに唇に吸い付きあった後、名残惜しくもそれは静かに離れていった。

「君の存在意義は男であることじゃねェ」

苦しいものを吐き出すようなそんな声。その続きの言葉に目からは滴が次々に溢れ出てくる。

やっぱりおれは、男になんてなりたくない。

「君が存在することが、おれにとっては幸せなことなんだ」

こんなにも率直に愛を囁いてくれる人が自分の前に現れたから。