酒場の子 ページ42
*
「さぁ、煩いのもいなくなったし。聞かせてもらおうか、情報屋の居場所を」
突然来店した美人な背の大きい女の人が、海賊たちに絡まれたと思ったら
海賊たちはすぐに返り討ちになって、一つの柱にその体を縛り付けられていた
ぼくはその一部始終を見て、全身の毛が逆立ったのを感じていた
「アンタ、一体何者なんだ...？」
「野暮なことは聞かない方がいい。世の中には聞いて得することもあれば、損をすることもある」
マスターの質問は、彼女によって間接的に拒絶され無かったことになる
名乗ることを拒絶するなんて...あんなに強いし、よっぽど悪い人なんだろうなぁ
僕の想像はマスターと彼女が話す間も頭のなかで膨らんでいって、勝手に彼女を悪魔のようにしてしまう
いいや...見た目で判断するのなんて悪いことだし、何せあんな綺麗な人が＿＿＿＿
「ラカム、おいラカム聞いてんのか！？」
「は、はいぃ！！」
しまった、また僕の妄想癖が...
叱責されたので我に返って、ぼくは持っていた布巾を手にマスターの元へ走る
その間も、その女性と目があって気が気じゃなかった
「お前、ジャーメインが今何処にいるか分かるだろう」
「ジャーメインさんが...？」
「ジャーメインっつーのか、その情報屋。居場所を転々とする情報屋なんて聞いたことねーよ気紛れだな」
女性は男性のような口調をしているけれど、声は上質なアルトで優しさを含んでいた
ついその聞き心地のよい声に気を取られていると、指輪のついた細い指が僕の額を突っついた
「わっ！！」
「アンタしか知らないんでしょ、その情報屋の居場所。じゃあアンタが案内してよ」
ボスには明日の朝って言ってるんだからね、となにやら急がなければならない事情があるらしい
そんな無茶苦茶な、と思いつつもさっきの戦闘を見るに逆らえないと頭が勝手に判断して、わかりましたと答えていた
「オジサン、この子借りるわ...あ〜〜、親とかいても拐われたとか言わないでよね。海軍が来るとヤバいから」
これ駄賃だから、黙っといてねと僕に渡されたのは自分の手のひらに収まりそうな位の大きなダイヤモンド
マスターには真っ赤なルビーが沢山渡されていて、この人もしかすると想像より"ヤバい人"なのかもしれない
「行くぞ、少年」
「ラカム、です！」
名前を呼んでほしくて、そう言って追いかければ彼女は大して興味が無さそうにひらり、と手を振ると
「A」
と、後を追いかけてくる僕にそう呟いた
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作者名：RIOT(別垢にいみ)
| 作成日時：2019年11月24日 23時
