優しさパール ページ16
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朝食を済ませたクロコダイルは朝から新聞に目を通している
基本的に私も新聞を読むのは嫌いではなかったので、彼が読み終わった後にいつも拝借していた
今朝はどんな情報が載っているだろうと思えば、二年前にご縁のあった麦わらが紙面を飾っている
「麦わらのルフィ...新世界で目撃情報ねェ」
生きていたのは知っていたが、改めてこの少年をしぶとい奴だなと思う
インペルダウンでの大暴れの件の時も、彼は相当な深手を負っていたのに叫びながら走り回っていた気がする
クロコダイルは一度彼に敗北している訳だが、案外再会したときにはクロコダイルの方がもう気にしていないという風だったので驚いた
そんな麦わらが今、私たちと同じ新世界にいるという
「奴のバウンティも上がってきている、また何かしでかしたんだろうが」
「そういうボスこそ、新世界に入ってからの賞金額の跳ね上がり方が半端じゃないですよね」
長年燻ってたみたいに、という私の皮肉を含んだ呟きに彼は少し眉を潜めるとお前にだけは言われたくない、と洗面所へ消えた
クロコダイルの賞金も頂上戦争の時に暴れたせいか、七武海だったので何年も動くことのなかった金額がカジノで大勝ちしたかのように動き出したのは二年前
確かに、その場にいた上に"あんなこと"をしでかした私も懸賞金が膨れ上がったのは事実だった
「でも、私のコレは実力云々の問題じゃないでしょう」
ペラリ、と新聞に挟まっていた更新された手配書が落ちてくる。その一つに、自分のものも含まれていた
案の定、その首にかけられた額は破額としか言いようがない。
私の実力に見合っていない、恐らく本気で戦えば私よりも今のクロコダイルの方が強いだろう
私の懸賞金は、私よりもその悪魔の実が及ぼす影響力にある
良く言えば、人を潤し...悪く言えば人を殺すこともできる能力
私の"ジュエジュエの実"の能力は
この世に、あってはならないものなのだ
「海軍もバカじゃねェ...そんな額を何も考えずに一人の小娘につけるような奴らじゃねェよ」
己の弱さと不甲斐なさに手配書を握りしめていれば、歯を磨いているのかクロコダイルがくぐもった声でそう言う
もしかして＿＿＿＿＿＿これは励ましてくれている...のか
私が落ち込んでいると思って、これは彼なりの優しさなのだろうか
まさかクロコダイルからそんな優しさを与えられるなんて思いもしなかったものだから
私は何の反応も出来ずに、ゴシゴシと粒の流れる目元を拭う
深みのある赤地の高級なカーペット上に、コロリと一粒のパールが転がった
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作者名：RIOT(別垢にいみ)
| 作成日時：2019年11月24日 23時
