#21 ページ21
.
「こうやって話すんは、初めてですね」
『です、ね』
ああ、ダメだ。
緊張なんてしないでよ、私のバカ。
声が聞けただけでドキンと跳ねる心臓。
隣に微かに触れる左手。
甘い声と、さらりと車道側に回ってくれる優しさに、まともに口もきけなければ視線だってあげられない。
情けないな、大人のはずなのに。
「緊張、してます?」
『えっ?あ、いえ!…すみません、話続かなくて』
「あ、いや、そういうつもりやなくて!
電話のときより元気ないな、って」
『…不思議です、自分でも。
やっぱり便利さに頼りすぎるのは良くないですね』
コミュニケーションもとれないなんて、よっぽど電話に頼ってたのか。
私って、携帯に依存しすぎかなあ。
「ほな、これからは会うようにしますか?」
少し速足で先に行く重岡さん。
立ち止まったかと思いきや、そう言って、ぱっと私を振り返って首を傾げてる。
その顔は、暗くてよく見えないけど。
その言葉の威力、ちょっとは分かってほしい。
『え、…』
不意に思い出す。
″また、会えませんか″
少しなら、いいかな。
少しだけだったら、素直になってもいいのかな。
『…会いたいって、言ったら、どう思いますか』
絞りに絞った小さな声に余計に顔が熱くなっていく。
まだ、彼の顔は見えないまま。
「…嬉しいです」
いつの間にか縮まった距離。
きゅ、と握られた指先が熱い。
「言うたやないですか、また会いたいって」
近くなった距離のおかげで、やっと見えた顔。
外灯に照らされたその表情に、抑えられていたはずの気持ちがまた顔を出す。
もう、後戻りできない。
『しげおか、さん』
声が震える。
こんな弱い姿、数える程しかなかったのに。
「はい。なんですか?」
彼一つで、こんなに脆くなるなんて。
『会いたい、です』
鼓動の音が漏れてしまいそう。
そのくらい、何もかもにドキドキしてる。
自分から言おうとして、でも上手く言えなくて。
ああ、こんなにもどかしいんだって。
初めて気づいたそれに、少し照れたくなった。
「ふふっ、俺もAに会いたいです」
指先から手を離して、今度は私の手ごと握り直して。
そんなことをするから、また期待する。
あの呼び捨て、冗談じゃなかったんだね。
もう懲りたはずのときめきと、蓋をしたはずの恋心。
ぶわあっと、全部出てきてしまいそう。
362人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズWEST」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ