常夏《赤》 (ページ33)

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『ごちそうさまでした。今日も美味しかったです』

「ほんまですか？うわあ、しげ喜びそう」

『え、重岡さんが？』

「あれ？聞いてません？
オムライス作ったんしげですよ」

『っ、え、』

「…彼奴に頼るのも、たまにはええんちゃいます？」

ニコッと向けられたアイドルみたいな笑顔に、思わず背筋が伸びる。

メロメロな実紅はとりあえず置いといて。

そっか…あれ重岡さんが作ってくれたんだ。

『…ふふっ、』

美味しかったなあ、あのオムライス。

「また来てな、実紅ちゃんも」

「うん。また連絡してもいい？」

「どーぞ。送ってこか？」

「え、いいの？」

「待っててくれるならやけど」

こっちはこっちで大分進展してるし。
私がいない間に何があったの？

一ヶ月って、短いようで長いのかも。

「あ、ちなみにAさん。
今日しげこの時間であがりですよ」

『え、』

「流星？今俺のことなんか呼ばんかった？」

「呼んでないけど話してた。
Aさんこれから一人で帰るんやって」

「は！？なに考えてはるんですか！
あかんって、俺送ってくから！」

『いや、違うんです。あの、え？』

「(頑張って)」

口パクされても、ときめかないんですが。

ぎゅっと掴まれた手首が熱を帯びる。

頭がクラクラして。
このまま気分で酔ってしまいそう。

「流星、ほなまた明日」

「おつかれー」

緩い「おつかれ」だこと。

…って違うんだよ。私はあの人にハメられたのに！

ニヤニヤしてる実紅と藤井さんに心で毒づきながらも手を引っ張ってくれる重岡さんにキュンとする。

一ヵ月ぶりだから？

いつもよりもっとかっこよく見える。

『重岡さん、』

「あ、ごめんな？痛かった？」

『っ、…すみまっ、せ、』

「わああ、泣かんといてや！
と、とりあえずそこの公園行こ？な？」

なんでこんなに安心できるんだろう。

蘇った記憶が襲ってきて、重岡さんの甘い声に思わず涙が零れてくる。

ぎゅっと繋がれた手は、暫く指先が彷徨って、やがて絡まり始めて。

絡まりきっていない小指。

その不完全さに、余計にドキドキした。