「好き」をあなたに。

「青」結んだ髪、靡いた髪。 ページ14

Main __ F.Ryusei







『藤井くん、ノートください』

「ん？…あ、これか。ごめん」

『ううん。大丈夫。
…下校時間近いけどまだいて大丈夫？』

「あー、せやな。ありがとう」





どういたしまして。


いつからやろ。

真面目で、典型的な優等生の彼女を、目で追うようになったのは。

この笑顔を、可愛いと思い始めたのは。


学級委員長とクラスメイト。
言ってそんな共通点もないわけで。

ただ、目で追うばかり。



だからこの日は偶然のチャンスだった。





『え、藤井くん？』

「やっと来た」





一応なのか最後の確認に教室を訪れた彼女に、なんとなく笑いかけてみる。

でも、心臓はバクバク。


やってさ、髪、おろしてるんやもん。





『なな、なんでいるの？』

「委員長待ってた」

『え、え？なんで？なんで帰ってないの？
私を待ってたって、どういう風の吹き回し？』





軽くパニックになる委員長が面白くて、…可愛くて。


少し赤くなり始めた教室と彼女に、自然と笑ってた。





「そんな驚くことないやろ。
…それ。今はおろしてるんやな」

『え？それ？…あ、えっ、と』





やっと気づいたのか、自分の髪に触れて慌てて。

俯いた拍子に、綺麗な髪がさらさらと顔を隠してく。


また一つ、心臓が跳ねる音がした。





『変、だよね。
いつも結ってるし柄じゃないっていうか…』

「なんで？」

『え、』

「俺はそっちの方がええと思うけど。
てかそっちの方が可愛ええ」





ぱく、ぱく、ぱく。

水槽で泳ぐ金魚のように口をパクパクさせて真っ赤になりながら目を見開いてる。


俺、こういうこと意外にさらっと言えるんや。

なんか変に思われそうやな。嫌やわ。





「ほら、もうすぐ下校時間なんやろ。
帰ろうや。送ってく」





状況が飲み込めてない彼女の手を取って彼女のカバンと一緒に引っ張った。


下駄箱に行くまでその手を離さないでいてくれたのはちょっとは期待してもええってこと？





『ふ、藤井くん、』

「ん？」





まだ校庭に響く運動部の掛け声。
うるさいはずなのに、彼女の声しか聞こえない。


抱きしめた体からは、自分と同じくらいに速い鼓動が伝わっていた。





『…好き、です』






___Fin

「赤」振り向いて、笑って。→←.

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