「好き」をあなたに。

「黄」本命にちょっとの反抗心。 ページ8

Main __ N.Junta







『モテますね』





嫌味っぽくそう言ってみる。

私の気持ちに気づいているのかいないのか。


学校だからって。バレンタインだからって。
いくら秘密で彼女をやっていても嫌なもんは嫌だ。

…なんで朝から、彼氏への告白同然のものを見なきゃいけないの。





「ふふ。そう見える？」

『だ、い、ぶ！』





分かってる。

彼が大人だから、優しさで本命を受け取ることも。
私になにかあったら困るから、秘密にしてることも。

全部分かってるけど、嫉妬して子どもっぽくなるのは仕方ないと許してほしい。





「なあ」

『なんですか』

「好き」





ボソリとそう言って、すぐさま人波に溶け込んでいくのは、ズルいと思う。


最初こそワクワクしていた気もする隠し事。


学校でスキンシップが取れない分、家では甘やかしてくれていた。

それをご褒美に、頑張ってたけど。





『…バカ』





彼の人気は衰えるどころか、増える一方。


分かるけどさ。

勉強は常にトップクラスで、努力家で周りが見えて、それでいてかっこよくて。
運動ができないのも、完璧な中の可愛い欠点で。

放っておけないし、なにより周りが放っておかない。


私なんかには勿体ないのかもしれないけど、それでも彼の彼女を名乗るのは、私だけの特権にしてほしい。





『…もう知らん』





あまり得意じゃない料理。

不味くても美味しいって言いそうな淳太くんのため。

心の底から美味しいって言ってもらえるよう頑張って何回も練習したガトーショコラ。


拗ねたまま間接的に渡すのは不本意だったけど、今はそんなの言ってられない。

…本命なんて、私からだけでいいのに。


綺麗にラッピングしたそれを少し強引に彼の下駄箱に突っ込んでやった。





.





「A」

『ん？』

「ありがとうな、下駄箱の」

『…なんで分かったの』





家に帰って、真っ先に淳太くんが口を開く。

まさかバレてるとは思わなくて。
ちょっとびっくりしながら振り返った。

いつも通り笑ってるけど、いつもとどこか違う笑顔。


寂しいのかなって思って、そっと抱きついてみる。





「ごめん、不安にさせてるんよな」





沈んだ声でそう言いながら、苦しいくらい抱きしめてくれるから。





『大丈夫』

『…好きだもん』





そう、言いたくなって。


体を離すと固まってる淳太くん。
少し背伸びして、珍しく私から口づけた。


結局、好きなんだもんね。淳太くん。






___Fin

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