「好き」をあなたに。

『黄』疲れも癒しも分け合って。 ページ27

Main __ N.Junta







「ただいまー」

『あ、おかえり』





結婚一年目。

最初に比べたら大分上達した料理を机に並べる。





「いつもありがとうな」

『いーえ』





大人っぽい淳太くん。
そんな彼に惹かれたのは、今からおよそ三年前。


まだ大学生だった私に「仕事」の大変さなんて分かるはずもなかったから。

疲れなんて一切見せずに教師の仕事をする彼のことを私は仕事のできる人だと思い込んでいた。


いや、実際に仕事もできるんだけど。


だから、疲れを隠す彼の癖は付き合ってから知った。





『淳太くん』

「ん？」

『ぎゅーする？』





びっくりしたような顔。

普段は滅多にしないけど、今日は特別。


大事なテストを間近に控えた今の時期。
先生も先生で対策を考えなくちゃいけなくて。

淳太くんは優しいから、対策を一人一人に考える。


隠しきれないほど、疲れるくらいに。





「…お見通しやな」

『淳太くんのことだからね。
今日も一日、生徒のためにお疲れさまでした』

「ん、ありがとう」





私よりも高い背。

ふんわりと香る同じ柔軟剤の匂いに、私の疲れまでも飛んでいきそう。





『淳太くんと結婚できてよかったなあ』

「なんやねん急に」

『ふふっ、好きな人の疲れ癒せるのって幸せだもん。
勿論、淳太くんがいるだけで幸せだけど』

「分かった。分かったから、もうやめや」

『照れてる？』

「よう言わんこと言うからやろ」





ぎゅううっと強まった力。

照れ隠しとも取れるその行動に、思わず笑っちゃう。





「…笑ってるやろ」

『んー？』





普段甘えない人が甘えるのって、可愛いなあ。

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