おはよう、今日も好きです。《赤》

#15 諦めたくない、なんて。 ページ15

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「おい」

『ん？』

「…やっぱ、いい」

『どしたの？重岡にしては元気ないじゃん』

「俺にしてはってなんやねん」

『そのまんまだよ』





本当は、今すぐにでも飛びつきたくて。
今すぐにでもあなたの手を引きたくて。

でもそう思えばそう思うほど、伸ばしかけた手は壁に当たったかのようにこちらに戻ってくる。


やっぱり、諦めるのは私には早かったらしい。





「……って、言えや」

『なに？』

「っ、別に」





まただ。

彼は最近、独り言っていうか、無意識になにかを呟くことが多くなった。


言ったあとには必ず、やべ、とか言ってる。

いや、こっちからしたら重岡の方が十分やばいけど。





『なんか重岡、最近変だよ？
上の空っていうか、独り言とかなんか意味不な行動とか…』

「は？っ、誰のせいやと…」





力任せに発せられたようなその言葉に、彼も私も目を見開く。


言ってしまったと言わんばかりに、俯いて唇を噛み締めてる私の好きな人。

ねえ、それって…





『…私のせい、ってこと？』

「いや、そういうわけや……」

『そういうわけあるでしょ。…ごめん』

「え、おいっ、A！」





やっぱり、無理だ。耐えられるわけない。



重岡が初めて私の名前を呼んだことも気づかずに、溢れる涙を振り払うように走り出してた。

私の足の向かう先はきっと、あの場所。

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