夏恋注意報《赤》

▽15 藤井が分かんない ページ15

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『分かんないよ…ねえ、分かんない。
私、今藤井が考えてること、なんにも理解できない』

『そんなに、泣かないでよ。
言ってくれなきゃ、私には分かんないんだってば…』





ねえ、藤井。苦しい。苦しいよ。
考えてることが全く分からないから。

ただ泣かれたって、なにも解決できないよ。





「…ふは、俺、だっさ、」

『は、？』

「ごめん、気にしやんといて。重岡？やっけ。
…あの子んとこ戻り、泣きそうやったやろ」





そんな顔で言われて、素直に聞けるわけない。





『…重岡くんと同じような顔してるくせに。
優しい人演じないで、話してよ』





恋してないだけで、こんなに嫌なこともあるの？


ただ、私は重岡くんといたいだけ。

…重岡くんと？
だって藤井とはいつも一緒にいるから。


なんでだろう。


藤井が泣いてるのに、私の頭の中には重岡くんの笑顔しか思い浮かばない。





「……き」

『ん？』

「Aのこと、好きやねん」





返事に困る。

ああ、あの仮説は合ってたんだ。
そんな冷静な考えしかできない自分に苛立って。


でもきっと、そんなことまで、藤井にはお見通し。





「返事も分かりきってる。
頼むから、そんな顔せんといてや…」





恋って、楽しいものだと思ってた。





『…うん、ごめん。
藤井の気持ちには応えられない』





普段は暴言なんていくらでも吐いてるのに。

今の私は、その二言を言うだけで胸がズキリと痛む。





「…ん。ほら、行きや」





行き止まりの廊下で座り込んだ藤井。


そんな彼からの許しを得ても、私は暫く、その場から動けずにいた。

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