おやゆびひめの日常

水着とパイナポー side225 10/19 ページ46

『水着、着たいなぁ。』

「は？」

急に何を言い出すんだ、Aは。ついさっきまでズムスタでピリピリしてたトレーナーとは全く違う人みたいだ。

あ、ちなみに勝ちました。6-2です、圧勝。これで対戦成績は2-1になった。明日勝てば振り出しに戻る。本当、今日勝てたのは大きいし、濱口のナイスピッチングにも助けられた。高城はめっちゃ緊張してたけど。

「何時でも着ればいいじゃん。何なら今から着る？ホテルだし。」

『バカ。そういう意味じゃなくて。』

ため息をつかれて、ぐいっと目の前にスマホを近づけられた。

『これ。ハワイ。』

画面に映っているのは、海を背景にした写真。どうやらインスタの投稿らしく、綺麗な女性が水着に隠した大きな胸を惜しげも無く見せている。

『あ、今、変なこと考えたでしょ。』

「なんで分かった？」

『バカ』

事実を認めただけなのに、枕がすごい勢いで飛んできた。さすがは元・ハンドボール部。肩の力だけはあるのか。

「ていうかなんで水着。」

『大事なのは水着じゃない！水着を着る場所!!』

「ハワイ？」

『そう！』

ハワイ、ハワイ、ハワイ...ロコモコ？ポキボール？ココナッツ？マカダミアナッツ？……あ。

「分かった！パイナップル!!」

『それ、ごうが食べたいだけじゃん。』

「おうw」

『そうじゃない！食べ物じゃない!!ハワイに行きたいの!!』

「ハワイ？でも、行く時間もない..…….あ。」

そこまで聞いてやっと分かった。ハワイなんてプロでやってたら早々行く機会はない。でも、１つだけあった。

『分かった？』

「分かった！今年の自主トレはハワイですればいいんだな！」

毎年、実家の方だったり、横須賀だったりで国内でしかやってないけど国外でもしたいんだな。

『ちがーーう!!!! なんで、今から自主トレの話してるの！そしてなんで私は行く前提なの!?』

「え、来ないの？」

『いや、行きますけど。』

「だろ？」

『でも、そういう意味じゃなくて。』

本当に分からない。自主トレ以外でハワイに行きたい？いや、なんでハワイ？

『もう……。優勝旅行、行きたいの。日本一になって。』

そう言ってそっぽを向いてしまったA。

リーグ優勝はしてないし、日本一なんてまだ先の事だけど、それを言って前を向かせる存在がここにいてくれる。

「...よっしゃ。ハワイ、連れていくよ。」

『本当？』

「本当。」

ちょっとだけこちらを振り向いたAの頭を手荒く撫で、シャワーを浴びにベッドを降りた、

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