おやゆびひめの日常

今年もお疲れ様。 10/4 ページ34

『今シーズンお疲れ様でした。』

「そちらこそお疲れ様でした。」

『えへへ。』

もう皆居なくなったロッカールームでごうと今シーズンのお疲れ様でした会をする。お家に帰ったら多分寝ちゃうだろうから、とここですることになった。

『ささ、ぐぐっと！』

「なに居酒屋のおっさんみたいになってるの。」

『呑まないの？』

「いや、呑むけど。」

ごうの持つグラスに冷蔵庫で冷やしておいたビールを注ぐ。

トレーナー室の冷蔵庫に10本は入れてたのに、呑もうと思って開けた時には5本くらいになっていた。犯人の目星はついているから、後で懲らしめておこう。

「ありがと」

『ん』

「Aは？」

『私が呑んだら、誰があんたを連れて帰るの。』

「ヘイタクシー」

『しません。』

「別にいいのに」

『私が嫌。車で帰りたいの。』

タクシーだとちょっと気を遣うけど、車だとそんな事ないから。特にごうは野球選手なんだし、嫌でも注目されてるんだから。

「歩いて帰るか？」

『馬鹿。私はこれでいいから。』

冷蔵庫にビールの横に入れといたノンアルコールの缶を開けた。プシュッという弾けた音がする。直接呑もうとすると、ごうが手を伸ばしてきた。

「貸せって。」

『お、ありがとう。』

素直に缶を渡し、横に置いてあったもう1個グラスを取って、差し出す。

『お願いします。』

「はい」

とくとくと注がれるノンアルコールビール。

「んー、酔うなよ。」

『大丈夫でしょ。』

そう言うと少しだけしかめっ面のごう。私がお酒に弱いって分かってるから。

「ちょっとは入ってるんだろ？」

『お酒じゃないから。』

「誰が決めた？」

『法律。』

ごくごくとグラスに入った金色の飲みものを呑むとごうも諦めたのか同じ様にグラスを傾けた。







(…………頭痛い)

(1人で8本も呑むからでしょ)

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