おやゆびひめの日常

初ホームランとか初勝利とか。 10/3 ページ30

昨日、CSを決めているので、普段よりは少し気楽に試合を見れる。
お客さんも同じみたいで、勝ち負けというよりは、選手の1球1投に見入ってくれているみたいだった。

「お、回るねぇ。」

コーチたちも少しワクワクしている。なんたって、今日は細川くんの初の1軍だから。ファームで2桁の実力がどこまで1軍で通じるのか、私たちも気になっていた。

『打つと思いますか？』

「打つんじゃない？」「打つといいねえ。」

小川コーチも坪井コーチも、監督が春から気にしていたルーキーがいったいどれほどのものか気になるらしい。

『ファイトー、細川くん!!』

ベンチから叫ぶと、ぺこりとお辞儀して返してくれた。いい子だ。これが、ごうとか桑くんだとこうはいかないんだよなぁ。

『若いって素晴らしい……』

67「Aちゃんも若いよ。」

『えー、照れますねー。ありがとうございます、浩康さん！』

67「調子には乗らない。」

『...すいません……』

謝ってから、グラウンドを見る。一塁にごう、三塁に柴田くんがいる。

そういえば、柴田くんったら早速細川くんに先輩風を吹かせてたなぁ。全然似合わなくて、ごうと爆笑したけど。

『さぁ、プロ初打席1球目……!!』

横のプーさんからものすごくバカにする目線を感じるけど、気にしない。普段なら、こんなことをしてたら、青山コーチの拳骨が降ってくるんだけど、今回は大丈夫みたい。

『ピッチャー笠原投げました！おおっと、低めに決まった。ストライク！』

それでも、細川くんは落ち着いていた。ふぅっと息を吐いて、マウンドを睨む。

『さぁ、キャッチャー松井構えました！そして、投げた、笠原！って細川ぁああああ!!!!』

ベンチからみんなしてボールの行方を見つめていると、ボールはバックスクリーン直撃のホームランになった。

『プロ初打席 ホームラン!!』

カッコよすぎる。なんか、横で「俺も打ちましたよー」とかニコくんが言ってるのが聞こえるけど気にしない。

ベンチに戻ってきてハイタッチする細川くんを見てから、タオルとボトルを出しておく。すると、後ろからトントンと肩を叩かれた。

『なんだい、細川くん？』

52「あ、あの...俺と...ハイタッチしてください……嫌だったらいいんですけど！」

なんて初々しい。こんな子、一軍にはいない。柴田くんですら、ちょっと生意気になってきたのに。濱口くんなんか、今永くんの手先と化しているのに！

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