◇9 ページ50
「さ、てと」
うーんと声を出しながら体を伸ばしてから、れんげが口を開いた。
「準備整えて荷物確認したらロビー集合ね」
そう指示を出すと、やや気だるげな声でC班が返事の声を上げる。満腹のせいか、まだ抜けない眠気のせいか。のろのろと皆行動を始め、景色がゆっくりと変わっていく。
「私たちも行こうか」
桜は桃芽のその声にうんと頷き、れんげも連れて部屋に戻った。階段を跳ねるように上がって部屋に戻り、今日の冒険に備えて支度を整えた。
*
ロビーに全員メンバーが揃い、れんげがさっそくこの場を仕切り始める。
「今日の予定確認するわよ。今日は結構移動多めだから気をつけなさい」
れんげがちらっとりんねを見る。つられて桜もりんねに目線を動かした。タクシーや電車での移動は彼の体にかなりこたえそうだ。本人も自覚はあるらしく――まああれで自覚がないというなら相当鈍感だが――、眉間にしわをよせてあからさまな表情をしている。
「酔い止めあるよ。飲む?」
耳打ちの形でそう言うと、「いいのか?」と少し申し訳なさそうに言ってきた。もちろん、と首を縦に振ると、
「じゃあ……」
呟くように返してきた。自然と頬が緩む。れんげの話が終わったら早速取り出さなければ。
「まず、ちょっと歩いて駅に行って電車に乗って神社にお参りに行く。そうしたら、次はその近くの温泉街に寄っていろいろ済ませる。次はわさび農場にお邪魔してインタビューしたり昼食をとったりする。その次は美術館。こんな感じね」
分かった? と言う確認の声に皆が返事をする。悪い返事は混じっていない。
「じゃあ、出発するわよ。忘れ物ないわよね?」
そう言われると不安になるものだが……恐らく大丈夫だろう。何か足りないとなってしまったらもう仕方ない。時間をわざわざ取らせるのも気が引けたので、桜は何も言わなかった。
「……ん? ちょっと聖灰少なかったか?」
「少なくていいわよそんなもん」
「なにおう?」
十文字とれんげが睨み合いを始めたが、放っておけば自然に終了することだ。無視を決め込むのが道理。桜は二人に背を向けてかばんの中に手を突っ込んで中身を探った。メッシュ素材の感覚が指にあたり、これだと掴んで引っ張り出す。頭に浮かんでいた通りの姿のポーチが手に乗って顔を出した。中から錠剤を取り出して、りんねに渡す。
「はい、六道くん」
「すまない、真宮桜」
ちょっとしたことだったが、桜には幸せの一時だった。
20人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あいloveあきら(プロフ) - 流れ星さん» その通りです。永華チャンがでかいだけです。 (2016年4月26日 22時) (レス) id: 93c1b013ec (このIDを非表示/違反報告)
流れ星 - 菅原くんってそんなに身長大きくないような…と思ったけど、永華さんがデカいだけな気がした。 (2016年4月26日 22時) (レス) id: ff41ad54a4 (このIDを非表示/違反報告)
愛吹(プロフ) - 流れ星さん» 閲覧、コメントありがとうございます! これから恋愛シーン沢山入れる予定なので私も楽しみです! これからも見て頂けると嬉しいです! (2016年4月26日 16時) (レス) id: a491fb7239 (このIDを非表示/違反報告)
あいloveあきら(プロフ) - 流れ星さん» コメントありがとうございます!国れん国いいですよね!!気が合いますね!!やったぁ!!!!! (2016年4月26日 16時) (レス) id: 93c1b013ec (このIDを非表示/違反報告)
流れ星 - 作品読ませていただいてます! これはもしやクロスオーバーでの恋愛成立……!?国見くんとれんげちゃんのカップルですか!? 私、クロスオーバーカップル大好きなので国れん、もしくはれん国おいしいです!!!ありがとうございます!!!!!!!!!! (2016年4月26日 15時) (レス) id: ff41ad54a4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作成日時:2016年4月13日 19時