◇30 ページ35
「女子？ そんなのいませんよ、どこにも」
きょろきょろと辺りを見回す西谷。そんなに首を動かす必要は無いはずなのだが、彼はその仕草を一向にやめない。
「旭さん疲れてるんじゃないっすか？ 早く部屋戻りましょう」
東峰の喉から変な声が出た。目をこすってみたが、彼女の姿はくっきりと目に映る。
「そんなに気になるなら言ってみたらどうです」
「えっ？ あー、そうだな……」
とかしたばかりの髪の毛をくしゃりと掴む。見知らぬ相手にいきなり声をかけるのは少し抵抗があった。ましてや回りの人に見えない存在なのだから、余計に気がひけた。
散々迷った挙げ句、彼らとすれ違う寸前にようやく話しかける事に決め西谷のそばを離れていく。意を決して口を開いた。
「ねえ君、女子部屋はこの階じゃないよ？」
「はっ？」
西谷とまるっきり同じ返し方をされ、東峰はそれ以降の会話の繋ぎ方がわからなくなってしまった。冷や汗が首筋を伝う。
「あ、あんた誰？ ……私が見えるの？」
赤髪の少年から体をはがし、こちらを睨め付ける少女。
「み、見えるって……？」
「私が見えるのかって聞いてるのよっ」
少女の目が鋭く光る。体が言う事を聞かず、うんうんと頷く事しかまともに出来ない。
数秒の無言。赤髪の彼が手をぽんっと叩く音が、張り詰めていた空気が幾らか柔らかくした。そして、彼はすたすたと早足で歩き出した。この場から立ち去ろうとしている。肩に乗っていた黒猫がずり落ちそうになった。うわっ、と声を出したそれに反応し、東峰の心臓が大げさに脈打った。
「あっ、りんね！？ 待ちなさいよっ」
しかし、彼の腕を掴んで静止させる。若干嫌そうな顔をしながら、少年――りんねと呼ばれていた――が振り替えって喋り出す。
「鳳。 お前なんで来たんだ？」
「りんねとお泊まりしたかったんだもーん」
状況がよく――いや、全く飲み込めない。
「き……君たちって、一体何者…？」
「あんたこそ、なんで私が見えるのよ！」
廊下に二人の――普通の者には東峰の声だけしか聞こえていないだろうが――声が反響する。すると突然、後ろに体が引っ張られる。バランスが崩れかけたがなんとか耐えた。
「すみません、うちの旭さんが」
西谷に服の裾を掴まれていたのだ。軽く頭を下げると、そのままの体勢で自室への道を進み始めた。結局、彼らの正体は分からずまま、東峰は後輩の行動に逆らえず強制的に部屋へ引きずりこまれた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 20人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あいloveあきら(プロフ) - 流れ星さん» その通りです。永華チャンがでかいだけです。 (2016年4月26日 22時) (
レス) id: 93c1b013ec (このIDを非表示/違反報告)
流れ星 - 菅原くんってそんなに身長大きくないような…と思ったけど、永華さんがデカいだけな気がした。 (2016年4月26日 22時) (レス) id: ff41ad54a4 (このIDを非表示/違反報告)
愛吹(プロフ) - 流れ星さん» 閲覧、コメントありがとうございます！ これから恋愛シーン沢山入れる予定なので私も楽しみです！ これからも見て頂けると嬉しいです！ (2016年4月26日 16時) (レス) id: a491fb7239 (このIDを非表示/違反報告)
あいloveあきら(プロフ) - 流れ星さん» コメントありがとうございます！国れん国いいですよね！！気が合いますね！！やったぁ！！！！！ (2016年4月26日 16時) (レス) id: 93c1b013ec (このIDを非表示/違反報告)
流れ星 - 作品読ませていただいてます！ これはもしやクロスオーバーでの恋愛成立……！？国見くんとれんげちゃんのカップルですか！？ 私、クロスオーバーカップル大好きなので国れん、もしくはれん国おいしいです！！！ありがとうございます！！！！！！！！！！ (2016年4月26日 15時) (レス) id: ff41ad54a4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作成日時：2016年4月13日 19時
