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五条先生の説明を聞き終わると同時に、憂太の瞳から涙が溢れた。
「……全部、僕のせいじゃないか。里香ちゃんをあんな姿にして、たくさんの人を傷つけて。僕が夏油に狙われたせいで、皆が死にかけた。全部っ…全部僕が…!」
膝から崩れ落ちる憂太に、何か言葉をかけそうになった。でも、その役目は私じゃない。チラリと今は亡きもう1人の幼馴染を見る。彼女は安心させるようにこちらを向いて笑うと、憂太の方へと歩みを進めた。
「憂太、ありがとう。時間もくれて、ずっと側においてくれて。里香はこの6年が生きてる時より幸せだったよ」
…里香ちゃんは、幼い身体に見合わず壮絶な人生を送っている。彼女が5歳の時、母が原因不明の急死でこの世を去った。そして小学校入学の2日前、父と登山に行って行方不明になり、1週間後に里香ちゃんのみが保護されている。父親は未だに失踪していて生死不明らしい。その後引き取られた祖母には殺人犯だと思い込まれる日々……。
だからこそ、さっきの言葉には重みがあって。だんだんと目に涙が溜まる。
「あ、それとさ憂太、─────」
里香ちゃんが憂太を抱き寄せて耳元で何かを呟いた。それを聞いた憂太が、少し驚いた表情をしている。何言われたんだろ??
そして、一通り憂太に遺言を告げた里香ちゃんが、今度はこちらに向かってきた。同じように抱き寄せると、耳元でそっと呟いてくる。
「A、今まで祓おうとせずそっとしてくれてありがとう」
『いや祓えなかっただけっすけど…』
「いいの。里香のこと知っても離れないでいてくれたし。…A、里香に遠慮しちゃダメだよ?里香は憂太とAの幸せをずっと願ってるから」
遠慮……ねぇ。里香ちゃんを言い訳にして、幸せになる権利なんてないとか言って不幸な道を歩むなってこと?ま、私は元々里香ちゃんの分も生き延びるつもりですけど。
最後に1つだけ聞いておこうと思い、彼女の澄んだ瞳を見つめる。
『…里香ちゃん』
「なあに?」
『それは、呪いですか?』
「ふふっ、うん!里香からAへの最初で最後の呪いだよ」
里香ちゃんは笑顔で言うと、私から離れてもう1度憂太の近くに行った。彼女の身体が少しずつ透けていく。
「バイバイ、元気でね。あんまり早くこっちにきちゃダメだよ?」
「………うん」
「またね」
里香ちゃんは、光の欠片となって消えていった。
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おもち食べたい(プロフ) - 真理さん» ありがとうございます!笑って頂けて嬉しいです笑 (2022年3月2日 18時) (レス) id: 20bccc651c (このIDを非表示/違反報告)
真理(プロフ) - 光に愛されし者で吹いたwww (2022年3月2日 0時) (レス) @page20 id: 155b63405e (このIDを非表示/違反報告)
おもち食べたい(プロフ) - イケメンになる予定。さん» ありがとうございます!コメ欄での会話って重くなるんですね…。初めて知りました…!今後は気をつけ…と言った矢先に返信してますね苦笑 (2022年2月7日 23時) (レス) id: 20bccc651c (このIDを非表示/違反報告)
おもち食べたい(プロフ) - 東峰さん» 頂かれちゃいまし(殴) (2022年2月7日 23時) (レス) id: 20bccc651c (このIDを非表示/違反報告)
イケメンになる予定。(プロフ) - 余計なお世話だと思いますが、コメ欄での会話は控えた方がよろしいかと…。端末が重くなってしまう、という話をどこかで耳にしたので😖💦外野から失礼しました🙇♀️ (2022年2月7日 16時) (レス) id: 8fa7e1941e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おもち食べたい | 作成日時:2022年1月23日 17時