隠したキズを ページ6
「あ、はい……すみません、迷惑かけて」
元はと言えば カップルが悪いのだけど……
他人、もといイケメン君の前で人のせいにするわけにはいかない。
それに、馬乗りしてしまったのは自分。
他人に罪をなすりつけるほど馬鹿じゃない。
「大丈夫っす」
私の左手には擦り傷。そこには血が滲んでいる。
だけど、ここでまた迷惑をかけるくらい 非常識な奴でもないから。
傷を隠すように、左手を後ろに回した。
二人の間に壁を作るような、沈黙。
それを破ったのは、
「あれ？」
私の疑問だった。
周りをいくら見渡しても、さっきまでいたエリ先輩がいない。
やっぱり、手間のかかる人と思ったのは内緒。
「はぁあ……」
深い溜息を一つ、浮かばせる。
私は 気分を入れ替えたけど、背筋はピンとせず猫背のまま。
それは、きっと この場にいる事が気まずく
感じるからだと思う。
「……」
突然にイケメン君は周囲を見渡して、頭の被り物を取る。
それと同時に、着ぐるみのファスナーを器用に開けて足をどかして脱いだ。
真冬だっていうのに半袖な彼の額からは、じんわりと汗が滲む。手には着ぐるみ。
真冬の光景じゃない、そう察した。
「あ、えっ……と」
イケメン君は、無表情のままジッと私を見つめる。
視線が 私のパーツのどこに向かれているのかは分からない。
気まずくなる一方で、周りの人達は徐々に減っていった。
近くで行われていた大道芸が終わったからだと思う。
「それ、じゃあ……失礼します」
私が そう言って、この場を立ち去ろうとした。
でも、それは手首に残る強い力で阻まれる。
「……手、怪我してるんすよね」
背には、私の怪我を見抜いたような声が聞こえる。
ゆっくりと振り向くけど、やっぱりイケメン君は無表情のまま。
私の手首を掴んだ彼の手が、力を緩める事は無かった。
「来て下さい」
「ちょっ…？！」
その強い力を残したまま、私を連れ歩き出すイケメン君。
周りからの視線はないけど、見られているような気がしてならない。
堂々と歩くイケメン君の横顔を見れば、心臓が跳ねた。
まだ 鯉……
いや、恋と断定するのは早すぎる。
ドクドクと鳴り止まない心臓の音を響かせながら、
救護室へと入った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 14人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
神應寺 将輝＠白狐＆雪犬(プロフ) - 自由自在に色変わる＝カメレオン (2018年2月2日 18時) (
レス) id: fc6b8aa6a8 (このIDを非表示/違反報告)
れやーと(プロフ) - 神應寺 将輝＠白狐＆雪犬さん» 毎度毎度コメント有難いです…！ なるほど、その考え方もあるのですね。ちなみに私は、自分に合った色に染まりたいです。期待だとか、夢の色だとか……何かの言葉通りじゃなく、自分自身が表せるような色です。要約すれば 自由自在に色を変化させていくって事ですね。 (2018年2月1日 3時) (レス) id: 560fb3554a (このIDを非表示/違反報告)
神應寺 将輝＠白狐＆雪犬(プロフ) - 何色に染まりたいか。僕は黒だな。孤独の色 (2018年2月1日 0時) (レス) id: 29ea05fe68 (このIDを非表示/違反報告)
神應寺 将輝＠白狐＆雪犬(プロフ) - 応援頑張ります(。・ω・。)ゞ (2018年1月19日 14時) (レス) id: b4c20837f1 (このIDを非表示/違反報告)
れやーと - 神應寺 将輝＠白狐＆雪犬さん» コメントありがとうございます〜！！ちょっとそのお話は自信がなかったんですけど、切ないと言っていただけて何よりです（笑）これからも応援宜しくお願い致します！ (2018年1月17日 18時) (レス) id: 560fb3554a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者ホームページ：http:/ 作成日時：2017年12月6日 19時
