5回目 [彼の思い] ページ24
どこかで耳障りのいい音が聞こえたかと思えば、視界から色が消えた。
それなのになぜだか俺の頭は冷静だった。
むしろ、
「えっ…」
驚いていたのは彼の方だった。
「インジさん」
この灰色の世界で、色があるのは俺と彼。
そして、俺が今から言おうとしているのは、俺なりに今までの出来事から考察をし、導き出した1つの結論。
「この世界は、あなたの“精神世界”、なんじゃないんすか？」
「…！」
「いやー、ほんとなんで繰り返すことに疑問を抱かなかったんだよ俺！って感じっす」
苦笑を浮かべながら言う俺を見て彼は驚いたように目を丸くしている。
「だって普通におかしいじゃないっすか。常識的にありえないっすよ？【現実】が繰り返されるなんて」
そう、現実、が。
「それで気がついたんすよ、裏を返せばこの世界はもはや【現実ではない何か】なんだって」
「…」
「当たりっすか？」
にやっと笑って問うと、彼も柔らかく表情を崩して大正解、と小さく拍手をした。
「よくわかったな、俺でもなかなか分からなかったのに」
当たり前のようにこぼされた言葉。
『分からなかった』？。この世界は彼の創った世界では無いのか。
「おや名探偵さん、推理を読み間違えちゃいましたか？」
顔に出ていたのかからかうように彼が言う。
そして、お手上げ、というように肩を竦めた。
「どうしてこうなったのかは俺にもよく分からないんだ」
「…色々聞きたいことはあるっすけど、」
脳裏に蘇る白。引き裂くような銃声。そういえば一瞬、彼の表情が見えたような気がする。こちらを向いて引き金を引く、彼の顔が。
どんなだったっけ。
「なんで…」
ーあぁ、思い出した。
「あんなことしたんすか…」
今にも泣きそうな顔をしていたんだ。
その顔は直ぐに赤に染まってしまったけれど。
数秒置いて松陰寺が口を開いた。
「………俺は、ずっと、この世から消えてしまいたかった」
落ち着いた声でただ淡々とそう言った。
「色んなことに疲れちゃって、どうでもいいと思うようになった。解放されたかった。」
「そんな…」
「そんな時、君たちが俺の前に現れた。…や、正確に言えば俺が現れたのか」
彼の目は優しい温もりを帯びていた。
「今までどこにいても馴染めなかったこの性格も、ここにいれば生きやすかった。必要とされている、と感じることも出来た」
松陰寺は何も無い灰色の空を見上げた。
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MUGI - 虎のすけさん» ありがとうございます！コメントは励みになるので嬉しいです笑 (2022年3月30日 23時) (
レス) id: 26f7606c1b (このIDを非表示/違反報告)
虎のすけ - お久しぶりです。作品すごく面白くて大好きです！続きが気になり過ぎます…！無理せずMUGIさんのペースで頑張ってください。応援しています！ (2022年3月30日 20時) (レス) id: 0fdf869e64 (このIDを非表示/違反報告)
MUGI - MOKKAさん» ありがとうございます！更新遅いですが必ず完結させますので！ (2022年2月5日 18時) (レス) @page15 id: 26f7606c1b (このIDを非表示/違反報告)
MOKKA(プロフ) - はぁ…最高…！！（←語彙力どこいった）続き楽しみです！ ハッピーエンドになっても、バットエンドになっても好き…！ (2022年1月26日 16時) (レス) @page11 id: d9dd59fc63 (このIDを非表示/違反報告)
MUGI - 自分でも「は？」みたいな感じになってきました…笑。分かりずらかったらすみません！なんとなくで、なんとなくでいいです… (2022年1月23日 20時) (レス) id: 26f7606c1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：MUGI | 作成日時：2022年1月7日 14時
