？？？ [消失] ページ16
どれくらいたったのだろう。
肩を揺すられる感覚で瞼を押し上げた。ゆっくりと視界を開くと､デスクの灰色が目に入る。
「兼近､大丈夫か？うなされてたぞ」
岡部が心配そうに俺をのぞきこんだ。
ん？なんでべー岡さんが？
あれ、そういえば俺何してたんだっけ？
「俺､寝てました？」
「？うん、ぐっすり」
なんだろう､なにか大切なものを忘れてしまったような気がする。
「兼近先輩」
後ろから高い声が聞こえる。
「あったかいコーヒー入れました､飲んでください｡目が覚めますよ」
「……ありがと」
ことりと置かれたカップからはゆらりと湯気が上がっていた｡何となく､それを見つめてしまう。
「あれ、」
なにか、足りない。
「イ、イ…なんだっけ…｣
「い？」
思い出せない、ここまできているのに。
なんだっけ、なんだっけ。
「寝ぼけてんのかー？」
揶揄う様な声も少し遠くに聞こえた。
「…そうみたいっすね！」
へら、と笑ってみたけれど、胸を締め付ける違和感は拭えなかった。
ふと窓に目をやる。
「今日雪降るっすよね」
無意識にそんなことを呟いた。
「え？そうなんですか？」
「え？うん、あれ？そうなの？」
聞き返され､知っていたわけでも聞いたわけでもないのに発言したことに、自分でも驚く。
「なんで兼近先輩がびっくりしてるんですかー？」
あはは、と笑う美希。まだ寝ぼけているのだろうか？
「調べたけど､降らないぞ」
岡部はスマホを片手にそう言った。
「そっすか…」
そのまま目線を下にずらすと、またも謎の違和感を感じる。
「……あそこにもう一人分机ありませんでした？」
2人は俺の指さす方を見て、顔を顰めた。
「兼近、そろそろお前大丈夫か？」
「ないですよ…？」
本気で心配されてきたことを察し、慌てて否定する。
「大丈夫っす、変な夢見たっぽくて」
「あー、たまにあるよな」
心にぽっかり穴が空いたような感覚。
「………え」
自分ではへらへら笑っているつもりだった。
目の前の岡部と美希が固まって俺を見つめている。
なんだろう。
「兼近……お前…泣いてるぞ」
「え？」
ポタリ、と机に落ちた水滴を見て、何かが外れた。
「あれ？なんで…」
急いで目元に手をやる。
次から次に溢れてくる涙を､俺はどうすることも出来ずに制服の袖でゴシゴシふいた。
どうして泣いているんだろう。
何を忘れてしまったのだろう｡
滴り落ちてゆく丸い水滴は､まるで雪のようだった。
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MUGI - 虎のすけさん» ありがとうございます！コメントは励みになるので嬉しいです笑 (2022年3月30日 23時) (
レス) id: 26f7606c1b (このIDを非表示/違反報告)
虎のすけ - お久しぶりです。作品すごく面白くて大好きです！続きが気になり過ぎます…！無理せずMUGIさんのペースで頑張ってください。応援しています！ (2022年3月30日 20時) (レス) id: 0fdf869e64 (このIDを非表示/違反報告)
MUGI - MOKKAさん» ありがとうございます！更新遅いですが必ず完結させますので！ (2022年2月5日 18時) (レス) @page15 id: 26f7606c1b (このIDを非表示/違反報告)
MOKKA(プロフ) - はぁ…最高…！！（←語彙力どこいった）続き楽しみです！ ハッピーエンドになっても、バットエンドになっても好き…！ (2022年1月26日 16時) (レス) @page11 id: d9dd59fc63 (このIDを非表示/違反報告)
MUGI - 自分でも「は？」みたいな感じになってきました…笑。分かりずらかったらすみません！なんとなくで、なんとなくでいいです… (2022年1月23日 20時) (レス) id: 26f7606c1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：MUGI | 作成日時：2022年1月7日 14時
