未来像を見よう? ページ43
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暗くて、ジメジメしてて、始めて怖いと思った。なんだか自分が削れていく感覚は比喩でも何でもなく、ただ苦しげに悶える自分にピッタリだと感じる。
浮遊しているのか埋まっているのか目を開けているのか目を閉じているのか笑っているのか泣いているのか聞いているのか聞こえないのか死にたいのか生きたいのか__死んでいるのか生きているのか。
信じられない程の責苦に、太宰はぐぅと声を漏らした。阿呆だなんだ云ってられない、自我が保てなくギリギリで太宰は耐えていた。
瓦礫の山は下に吸い込まれて見る影もなく消え去っている。自分もいずれ嗚呼なるのだろうが、命ある者の処理には時間がかかるらしい、焦らされてしまっている。
(Aを虐めた私にはお似合いの終わり方、か)
何を後悔するわけでもなく、ただ浮遊感に身を委ねる。兄も先生も非常に気にかかるが、今更泣き言は垂れることが出来ない。けじめも真面目に、だ。
ふと、目の前から綺麗な装飾品が零れ落ちてきた。その時太宰は、自分が目を開いていることに気がつく。
「これは……」
Aがつけていたブレスレットだった。
「君には、がっかりだよ」
ふと声が聞こえた。聞き覚えと目眩が同時に起こり、目を閉じて開く間に目の前に人影が現れた。
それは、夢の中の太宰だった。
消えた筈じゃ、と端的に太宰が尋ねると、物に残った残滓だと軽い口調で夢の中の太宰は返す。
「……?意味が判りかねるね。だって、Aは今私という悪者が消えて、歓喜に打ち震えている筈だよ」
「人間掌握術の一つも覚えられない脳味噌に成り下がったのかい?ましてや彼処まで判り易い『善人』がそんなことを思うとでも?」
「でも、償いが……」
太宰と夢の中の太宰の言葉の応酬。着地点も見えない会話に終止符を打ったのは夢の中の太宰だった。
「Aはそれを望んでいないだろ?」
「…………っ」
太宰は言葉に詰まった。夢の中の太宰は軽く笑って、云う。
「ほら、来客だよ__」と云って残滓は消えた。
そして入れ代わり立ち代わり、少女の声が響く。
「……莫迦太宰っ!!なんで私の為にそんなことしたの莫迦莫迦莫迦莫迦!!有島お兄さんが居なきゃ、太宰本当に死んでいたんだよ!?帰ろう、速く__」
「なんで君が……」
Aが、そこには居た。
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ふうゆず - 泣いた (2019年5月4日 5時) (レス) id: 77992ccb5c (このIDを非表示/違反報告)
江羅古九 - 珍しいストーリーで面白かったです! (2019年3月27日 12時) (レス) id: 0bf8db909c (このIDを非表示/違反報告)
きの - 下のゆきさんという人とは別人です (2019年3月10日 4時) (レス) id: 6cf2837f77 (このIDを非表示/違反報告)
きの - 完結おめでとうございます オチですがなんだかいろんなルートがありますが個人的には谷崎さんとかがいいかなと思います 一番多いのは太宰さんルートみたいですがなんかいやだな 太宰さんはずっと夢主ちゃんと友達のままでいた方がいいと思います (2019年3月10日 4時) (レス) id: 6cf2837f77 (このIDを非表示/違反報告)
輝星奏 夢歌♪(プロフ) - 初めまして、完結おめでとうございます!大好きです!←(唐突な告白w)夢主に同調しすぎて最後は特に泣きっぱなしでした。心にずっと残る素敵な作品、ありがとうございました。私は太宰さんルート見てみたいです。これからも頑張って下さい! (2019年2月24日 21時) (レス) id: cb7767f193 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:レン | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/
作成日時:2019年2月3日 13時