微睡み醒めずに雁字搦めの蔦の中 ページ33
◆
それは、自分だった。
そうとしか云い様がないのだ。
鏡合わせの向こう側を覗いた気分に、太宰は珍しいことだと小さく微笑んだ。奇しくも、一番Aを虐げていた自分が、夢ではAを一番に考えているのだ。皮肉にも程がある。
「私がそんなことをした始末をつけなければならないだろう？だから、君の悲願を成就させてあげよう。死んで呉れ」
「それは勿体ない申し出だ」
濁った瞳で云うもう一人の自分に、太宰は茶化して明るい声音で答えた。しかし、目には同情の色が浮かんでいる。
「でも、それじゃAは救えない判っているだろう？」
首を絞めている方の太宰がたじろぐ。しかし、しかしとしきりに混乱しだしたところを、するりと抜けた。
涙を浮かべた目を見て、太宰は＿＿夢は尋ねる。本物に、偽物が。短くて、余りにも重くて大きい質問を。
「なら、私は如何すれば良かったの？」
アバウトで、子供を想起させる質問。しかし、こめられた言葉が重く重く太宰へのしかかる。如何も出来るものでもない、なんて軽々しく口には出せない。
「ねぇ」
太宰が太宰へ問う。
「ねぇ！！」
更にトーンを上げて、聞いた時に太宰は小さく呟いた。
「君の存在意義はあったよ」
「……え？」
「だって、私が壊しかけた彼女の心を繋ぎとめたのはきっと君だ。ありがとう」
「…………っ！」
太宰は涙を流す。無論、夢の中の太宰の事だが、彼は嗚咽混じりに一言を太宰へ残して、そして光となって消えていく。
太宰は判ったと一言云った。
＿＿『Aを、助けてやってくれ』
□□□
この場を借りて言わせていただきます。素敵な作品が完結しました。名前を言うのは本人への確認が必要なので、今は伏せますが、大好きでした。
今、同じランキングに並べていることはただの僥倖としか言いようがありません。
お疲れ様でした。
ありがとうございました。
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ふうゆず - 泣いた (2019年5月4日 5時) (
レス) id: 77992ccb5c (このIDを非表示/違反報告)
江羅古九 - 珍しいストーリーで面白かったです！ (2019年3月27日 12時) (レス) id: 0bf8db909c (このIDを非表示/違反報告)
きの - 下のゆきさんという人とは別人です (2019年3月10日 4時) (レス) id: 6cf2837f77 (このIDを非表示/違反報告)
きの - 完結おめでとうございます オチですがなんだかいろんなルートがありますが個人的には谷崎さんとかがいいかなと思います 一番多いのは太宰さんルートみたいですがなんかいやだな 太宰さんはずっと夢主ちゃんと友達のままでいた方がいいと思います (2019年3月10日 4時) (レス) id: 6cf2837f77 (このIDを非表示/違反報告)
輝星奏 夢歌♪(プロフ) - 初めまして､完結おめでとうございます！大好きです！←(唐突な告白w)夢主に同調しすぎて最後は特に泣きっぱなしでした｡心にずっと残る素敵な作品､ありがとうございました｡私は太宰さんルート見てみたいです｡これからも頑張って下さい！ (2019年2月24日 21時) (レス) id: cb7767f193 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：レン | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/
作成日時：2019年2月3日 13時
