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暁の夜に浮かぶ月を見ていた。 ページ30



文字通り、最後の夜だった。Aの顔が月明かりに照らし出され、死んだように安楽の表情があらわになった。太宰はAの頬にかかった髪を耳へ掛けて、目線を変える。

「打つ手がない、じゃないですか……」
「そうだねェ……不味いよ」

谷崎が困った口調で云うと、与謝野女医はそれに応じた。もし此処に乱歩や賢治が居たらと思うが、二人共出張で明日まで居ないのだ。仕事故に放り出すわけにもいかない。

「……クソッ!」
「……助けられないのか……?」

国木田と敦が悲痛な声を漏らす。国木田がおもむろに壁を殴ると、国木田の拳から血が出た。ただ、この時ばかりは与謝野女医も囃し立てる真似はしない。

「……ん?」

阿呆っぽい声が太宰から聞こえる。太宰は手に違和感を感じて、Aの頬を撫ぜていた手を顔の前に持ってきた。手には、透明な液体が付着していた。

Aが、涙を流していた。

「……A……」

絞り出すような苦しげな声に、皆が耳を塞ぎたくなる。ふと、思いつくように太宰はポケットを漁った。

適当にひっぱりだす。そこには、錠剤が混ざっていた。

「__あの時の……!」

Aの夢に入ると偽って薬を隠した時の物だった。今更役立つとは、随分な巡り合わせだ。

「……太宰、頼んだよ」

驚くこともせず、与謝野女医は太宰は云う。最後の希望、最後のチャンス。太宰はひらひら手を振って答えた。

「必ず__取り戻しますよ」

錠剤を口に含むのを見かねて、与謝野女医は誰にも聞こえない声で云った。

「これで良いんだね、A……」

ただ、暁の空に浮かぶ月を見ていた。

□□□
ver:太宰?辺りの伏線を回収しました〜

縋ってしまえよ、その夢に。→←ただ、静謐たれ。



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作品ジャンル:泣ける話
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ふうゆず - 泣いた (2019年5月4日 5時) (レス) id: 77992ccb5c (このIDを非表示/違反報告)
江羅古九 - 珍しいストーリーで面白かったです! (2019年3月27日 12時) (レス) id: 0bf8db909c (このIDを非表示/違反報告)
きの - 下のゆきさんという人とは別人です (2019年3月10日 4時) (レス) id: 6cf2837f77 (このIDを非表示/違反報告)
きの - 完結おめでとうございます オチですがなんだかいろんなルートがありますが個人的には谷崎さんとかがいいかなと思います 一番多いのは太宰さんルートみたいですがなんかいやだな 太宰さんはずっと夢主ちゃんと友達のままでいた方がいいと思います (2019年3月10日 4時) (レス) id: 6cf2837f77 (このIDを非表示/違反報告)
輝星奏 夢歌♪(プロフ) - 初めまして、完結おめでとうございます!大好きです!←(唐突な告白w)夢主に同調しすぎて最後は特に泣きっぱなしでした。心にずっと残る素敵な作品、ありがとうございました。私は太宰さんルート見てみたいです。これからも頑張って下さい! (2019年2月24日 21時) (レス) id: cb7767f193 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:レン | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/  
作成日時:2019年2月3日 13時

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