【文スト】君は要らない【太宰治】

番外編:夏が来るのは君のせい ページ26

◇
青い空が目に痛かった。

風に乗った熱が頬を溶かして、揺れた向日葵がAを淡い夢へ誘う。爽やかな夏を切り取った風景に、そっと目を伏せた。

冬とは大違いだ。悴んだ指先も、心も、何も夏にはない。開放感があった。

偽太宰がAを見て微笑む。白いワンピースを染め上げた夏色が、偽太宰の目には眩しかった。

「今日は夏か」と、偽太宰が云うと、Aはそうみたいだねと笑った。事の発端は昨日に遡る。

◇
「夏を堪能したい」
「流石に私も云うよ……莫迦なの？」
「酷いなぁ」

Aが突飛なことを云うと、擁護しきれないといった具合に偽太宰が突っ込む。カラカラ笑うAは太宰に何処か似ていた。

「夏ってさ、よく判んないんだよね。蝉の声に、風鈴の音に、全てを知ってみたくて」
「ふ〜ん」

偽太宰も大して真面目に聞いていた訳では無いが、今日になってそれが現実になったのだ。

不思議に思うが、これは夢だ。

取り敢えず、偽太宰は夏を遊ぼうとAの方へ駆け出した。

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明日入試なのでこれの後編出します。少ねぇ……
あと雪寒っ

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