Ｑ:涙は人を強くする？ Ａ:それは大嘘です ページ24
◇
Aは果物を剥く。何処ぞの偽太宰から貰った林檎が山ほどあり、自分で食べるには持て余していたためだ。
ここはAの自室。休日である。
果物ナイフでスルスルと剥くAを、にこやかに敦は見つめている。「美味しそうだね」と敦は云った。
「うん、なんか美味しいヤツらしいよ。はい」
「……美味しい……」
一口齧ると果汁が溢れ出す林檎に、敦は思わず感嘆を漏らす。蜜の多い林檎を美味そうに頬張る敦を見て、幸せそうにAはもっと食べてと云う。
奇しくも、ここにいるのは子供の頃に食糧にありつけなかった者のみだ。誰よりも大切さを知っているし、ごくりと呑み込んだ林檎の欠片の美味さを誰よりも知っている。
林檎をすっかり食べ終えると、Aが果物ナイフを洗いに行く。台所に立つと、敦が尋ねる。
「幸せ？」
「うん、とっても。自分には勿体ないね」
林檎の皮を見た。草臥れたそれは、まるで自分たちの行く末を示しているようで恐ろしかったが、敦は目を無理矢理逸らす。
「腹ごなしに、外出よっか」
Aが提案すると、敦は笑ってうなずいた。
◇
「桜、綺麗だね」
「うん」
この世界において季節感は一定ではない。変動する季節は、Aの望むとおりに辿っているらしい。今日は春を
「川沿い、歩こうか？」
「うん、絶対綺麗だ」
敦の問いに対して親しげに返すA。何故か瞳が哀しげに見えたのは、桜の匂いにあてられたからだろうかと敦は思った。
◇
川は波紋を打ちながら淡いピンクを揺らす。花弁が空を不規則に舞うと、水面に落ちていった。目線はそれを追おうとするも、やはりAに目が行ってしまう。
Aは無邪気に喜んでいた。
「桜を見たのは初めてだね。否＿＿周りに咲いていたのは判るけど、見ようとして見に来たのは初めてだ。こんなに綺麗だとは知らなかったよ」
「それは、良かった」
日暮れ、Aのアパートメントに戻る途中にAは敦に聞いた。
「世界ってさ、残酷だよね。夢と現実、どっちが好き？」
「……現実、かな。否あの別にこっちを否定したいって訳じゃないんだけど……！」
一息。
「でも僕が拾われたように、悪いことだらけじゃないのかなって」
Aは無言で下を向いた。怒らせてしまったかと敦は焦るが、ニカッと笑ってAは云う。
「それが聞けて良かったよ」
それが何を示唆するか＿＿敦は未だ知らない。
Ｑ:笑っていれば報われる？ Ａ:笑顔のやり方を忘れました→←未だに心の傷が痛いんだ
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ふうゆず - 泣いた (2019年5月4日 5時) (
レス) id: 77992ccb5c (このIDを非表示/違反報告)
江羅古九 - 珍しいストーリーで面白かったです！ (2019年3月27日 12時) (レス) id: 0bf8db909c (このIDを非表示/違反報告)
きの - 下のゆきさんという人とは別人です (2019年3月10日 4時) (レス) id: 6cf2837f77 (このIDを非表示/違反報告)
きの - 完結おめでとうございます オチですがなんだかいろんなルートがありますが個人的には谷崎さんとかがいいかなと思います 一番多いのは太宰さんルートみたいですがなんかいやだな 太宰さんはずっと夢主ちゃんと友達のままでいた方がいいと思います (2019年3月10日 4時) (レス) id: 6cf2837f77 (このIDを非表示/違反報告)
輝星奏 夢歌♪(プロフ) - 初めまして､完結おめでとうございます！大好きです！←(唐突な告白w)夢主に同調しすぎて最後は特に泣きっぱなしでした｡心にずっと残る素敵な作品､ありがとうございました｡私は太宰さんルート見てみたいです｡これからも頑張って下さい！ (2019年2月24日 21時) (レス) id: cb7767f193 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：レン | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/
作成日時：2019年2月3日 13時
