未だに心の傷が痛いんだ ページ23
◆
「え……」
鏡花が目を覚ますと、敦が目の前に立っていた。ゴシゴシと目を擦ると、液体が付着する。それが涙だと自覚するまで、鏡花は数秒を要した。
「Aは佳い人、だったの？」
「僕には少なくともそう思えたよ」
拙い鏡花の言葉に、敦が儚げに笑って返した。一番長く連れ添った敦の言葉だからかとても重い。鏡花はごめんなさいと小さく云う。瓶の底が今にも見えそうなほど、小瓶の中の錠剤は少ない。
もう、夢に入れる回数は片手で数える程度だとこれが示している。
「僕、行ってきますね」
その中から
ソファに倒れ込むと、敦は笑った。
もう帰る気は無かった。
◆
「僕もこっちに居ますね」
「へ？」
偽敦が居なくなったことで生まれた誤差を埋めるように敦は云った。Aはキョトンと返すのみで、喜ぶというより驚いている。パソコンの横に貼られた
「え、嬉しい……けど。いいの？」
「はい」
敦は微笑んでAへ云った。
◆
与謝野女医はもう三日も起きない敦の横でため息を漏らした。
「まさか敦まで起きないなんてねェ」
「頬を叩いても反応はないですし……」
「俺が蹴っても反応はありませんでしたよ」
谷崎、国木田が各々の結果を述べる。頬を叩くのはまだしも、蹴るのは可哀想ではないかと外野の太宰は思った。
「多分、敦くんは戻る気がないよ……本人の意思を尊重してやるといい」
「珍しい、アンタがこの件に口出すなんて」
「まあ改心しましたから……」
太宰は懲りた口調で与謝野女医に云った。へぇ、と与謝野女医は見直したように云う。辛そうに顔を伏せる太宰とは、珍しいものだ。
「お取り込みのところ、すみませんね」
「実験段階の薬品の乱用は困りますよ＿＿没収させていただく、と上から言葉を貰いました」
「「「……！？」」」
「当たり前でしょう。借り物ですからね」
つまらないように安吾は云った。ただ、譲歩の姿勢を見せる。
「Aさんについてはこちらで引き継ぎます。敦さんが目覚めたらそう伝えて下さい」
事情を知らない安吾は、瓶を持って社を出た。呆然と辺りを眺める探偵社員に、一縷の希望も見えなかった。
Ｑ:涙は人を強くする？ Ａ:それは大嘘です→←小さな言葉がどろどろ
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ふうゆず - 泣いた (2019年5月4日 5時) (
レス) id: 77992ccb5c (このIDを非表示/違反報告)
江羅古九 - 珍しいストーリーで面白かったです！ (2019年3月27日 12時) (レス) id: 0bf8db909c (このIDを非表示/違反報告)
きの - 下のゆきさんという人とは別人です (2019年3月10日 4時) (レス) id: 6cf2837f77 (このIDを非表示/違反報告)
きの - 完結おめでとうございます オチですがなんだかいろんなルートがありますが個人的には谷崎さんとかがいいかなと思います 一番多いのは太宰さんルートみたいですがなんかいやだな 太宰さんはずっと夢主ちゃんと友達のままでいた方がいいと思います (2019年3月10日 4時) (レス) id: 6cf2837f77 (このIDを非表示/違反報告)
輝星奏 夢歌♪(プロフ) - 初めまして､完結おめでとうございます！大好きです！←(唐突な告白w)夢主に同調しすぎて最後は特に泣きっぱなしでした｡心にずっと残る素敵な作品､ありがとうございました｡私は太宰さんルート見てみたいです｡これからも頑張って下さい！ (2019年2月24日 21時) (レス) id: cb7767f193 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：レン | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/
作成日時：2019年2月3日 13時
