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JKside
「じゃあオッパ！来て！」
ヌナからのオッパ呼びに不覚にも萌えながら、手を捕まれる…はずだった。
ジジッと音がしてすり抜けるヌナの手。
よく見れば俺の体と空気の境はノイズのようになっていた。
「オッパ、不思議だね？」
にへら、と笑う顔。
不意に、肩のあざに目が行く。
『…これ…』
青黒いそれは、内出血の痕。
なんでもっと早くに気付かなかったんだろう。
「…私、いじめられてるんだ」
はっと息を呑む。
その瞳はどんよりと曇っていた。
「皆、おかしいって言うんだ。一人で数学をやっていたら、一人で英語をやっていたら…ジンと、仲良くしてたら」
『それは…』
「ここ最近、声が聞こえるんだ。皆の心の声。だけどなんでだろう」
オッパの心は、温かいね。
ふわり、と笑う顔。
それは俺が一番よく知る、大人びたヌナの笑顔だった。
『この曲、俺が好きな曲なんだ』
なんだか切なくなってしまって、守れない自分が嫌だった。
こちらを見るヌナは、興味津々で俺のスマホを見つめる。
ヴァイオリンの音が流れ、旋律が重なっていく。
『ある人が教えてくれた曲の中で、大好きな曲。カノンっていうんだ』
そのある人は、君なんだよ、なんて言えないけど。
「カノン…」
ヌナがジン先生に会ったとき、俺は途端にこの曲を流した。
ヌナが悲しそうに叫んでいたのに、瞬間驚いたような表情で見つめていたっけ。
「オッパ…私、私…」
『俺以外、誰もいないよ。だから、だから泣いていいよ、ヌナ』
ふぇ、と声が漏れたと思ったら、ヌナは必死に声を抑えて泣いていた。
ヌナの涙は、想像を絶するような苦しみに耐えた、小さな心を溶かしたようだった。
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作者名：茜夏 | 作成日時：2018年4月14日 17時
