図書室ノ赤薔薇 (ページ6)

今日:4 hit、昨日:0 hit、合計:592 hit

5. ページ6

生徒玄関を出ると、体育館倉庫目掛けて走る。体育館の裏にある倉庫の前に立つと、あたしはその重い扉に手をかけ、思い切り開け放った。

「ちょっと！話が全然違うじゃないの！
シュークリーム返しなさいよ！あん……た……」

えっ？と間抜けな声が漏れた。

目の前にいるのは、情報屋ともう一人……知らない男子生徒。情報屋は彼を膝の上に座らせて、さらにワイシャツの下に手を突っ込んでる。

「ぎゃっ、ぎゃー！ぎゃー！変態っ！」

衝撃的な光景に叫んでいると、膝の上に座らせられていた男子生徒が呆れたようにため息をついた。

「……これ、いかがわしいことしてるわけじゃねえから」

薄暗い倉庫の中にある跳び箱に座り、あたしは二人の話を聞いていた。

情報屋の膝上に座らせられていたのは、一年のイサキくん。
彼らはイサキくんが現在進行形で踏み倒している情報料(シュークリーム)を賭けて、ゲームをしていたらしい。

「ぜんっぜんくすぐったそうにしないからさー。直にこちょこちょしたら変わるかなーと思ってね。

そこでタイミング悪く木下が来ちゃったんだけど」

へらへら笑いながら情報屋は言うと、今日はどうしたの？と首を傾げた。

「あっ、あんたねぇ！噂、全然なくなってないじゃないの！
ちょっと話は違うけど……、また仕事できない子が出てきたらどうすんのよ！」

「えー、ちゃんと噂の大元は絶ったって聞いたんだけど」

情報屋はそう言って、何故かイサキくんを見る。イサキくんはその視線に気づくと、びくりと肩を跳ねさせた。
この二人……何かあるんだろうか。

「……取り敢えず、今度こそどうにかしてよ。あたしたちだって誰かの代わりに仕事できるほど暇じゃないの」

シュークリームは成功報酬ってことにするから、今度こそちゃんとやってよね！と情報屋に言って、体育館倉庫を出ていく。

「何も出来ない人間のくせに……」

扉を閉める直前、暗闇の向こう側で誰かが呟いた気がした。