図書室ノ赤薔薇 (ページ5)

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sideイサキ

「呼ばれた理由、分かるよね？」

汚れたマットに座る情報屋が何時になく低い声で言った。相当機嫌が悪いのか、立てた左膝に肘をつき、頬を指で叩いている。

「料金滞納だろ。多すぎんだよ、シュークリーム」

はぁ……と態とらしくため息を吐き、もう少しまけろよ、と続ける。
学校の怪異を喰ってるんだからその分くらいは差し引いてくれてもいいんじゃないかと毎度思うのだが、コイツはちゃっかり正規料金を請求してくる。

「まけてほしい？」

情報屋が聞く。

当たり前だ。

少しでも安くなるならなんだってするつもりだと答えれば、情報屋は何か良くないイタズラを思いついた子供のような笑みを浮かべ、手招きした。

「イサキっちって、絶対くすぐったがりさんだと思うんだよね〜」

情報屋の言葉で十分間、くすぐられて笑わなければ今まで滞納した分はチャラ。笑ったら近くのコンビニで買ってくるという負ける気のしない賭けが始まった。

「膝の上に乗る意味がわからん……」

「えー、くすぐりやすいんだもん。イサキっち、随分と余裕そうだね……？」

何で？と聞いてくる情報屋に知らねぇよ、と返す。

「直にくすぐるのは？絶対これ負ける気がする！」

相当シュークリームに飢えているらしい。お好きにどうぞ……と呟いた瞬間、遠くから足音が聞こえてきた。