図書室ノ赤薔薇 (ページ2)

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図書室ノ赤薔薇ページ2

「ねぇ、知ってる？」

カウンター内で貸出禁止図書に指定された漫画を読みながら、百瀬が声を潜めて言った。

何よ……とパソコンに目を向けたまま話を促す。
百瀬は勿体ぶった様子で、「あのね」と切り出した。それは、存在自体を消してもらったはずの噂話で──あたしはその話を止めさせようと叫んだ。

「やめて！その話はしないでって言ったでしょ！」

百瀬は驚いた顔であたしを見る。

彼女の口から発せられたのは、「赤薔薇」という単語。
図書室の赤薔薇なんて噂のせいで委員会の仕事が出来なくなった生徒もいたのに、まだそんな噂があっただなんて……とショックだった。

「待って待って、違うの。赤薔薇って言っても前の噂と全然ちがくて……」

百瀬が慌てたように手を動かした。慌てていたり、何かを説明する時に忙しなく動く手が、今はあたしを一層イラつかせる。

「何が違うって言うのよ」

知らず知らず、きつい口調になる。百瀬は僅かに肩を揺らし、怒らない……？と呟く。

「話にもよるからさっさとして」

もし、仕事に支障が出るようなものであれば文句を言いにいかなければいけないだろう。百瀬は周りに人がいないことを確認してから、ゆっくりと話し出した。