お隣の推し様の世話役になっていた件【紫】

#32 ページ36

だから嫌だったんだ。

マンションとは2年の契約。

「私、2年後にはここを離れて貴之さんのことちゃんとケリをつけようと思って」

「うん……」

なら今のうちに私を抱きしめているこの手は届かない距離になってしまう。

「だから付き合えないんですよ、遠距離恋愛なんて長く続くものじゃない」

離れていれば心だって離れていく確率が高い。

「だったら俺が絶対に迎えに行く、君に相応しいしっかりした男になったら」

……これは、告白なの？プロポーズなの？

分からないけど……。

「っ……うっ……」

涙が溢れてくる。

「絶対迎えに行くから、それまで待っててくれない？」

私は涙を拭き取りこう言った。

「待ってます……絶対迎えに来てくださいね」

「！もちろん」

彼の顔が近づいてきたが私は。

「待って！最後まで聞いて！」

彼との顔の間に鞄を挟み込みキスであろう行為を拒否した。

「えぇ！？あれ受け入れる流れじゃなかった！？」

「いや、そうじゃなく！私達まだ会って1年も経ってない！」

いくら推しとはいえ突然付き合うのは無理がある。

私の心臓が持たない。

「ですから、2年間は貴方の世話役続行で！」

まずはそこから始めなくてはならないと思った私。

「そんなぁ〜！」

姫河A22歳、お隣の推し様の世話役になってました。

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