お隣の推し様の世話役になっていた件【紫】

#30 ページ33

家に戻り家の扉を閉めて鍵をかけた。

そしてチェーンロックも掛ける。

「はぁ〜……」

だから嫌なんだ……。

「優しくするから縋りたくなってしまうんじゃん」

泣き止んだ後に優しく私を見つめた瞳。

あの目が私を見てくれることなんてないって考えてた。

ファンであれば自分を認知してもらいたいと思うのは当然だと思うけど。

実際にそんなことあるなんて思わなかったから。

だってそんなこと夢のまた夢だと思ってたし。

「あれ……？」

郵便受けになんか入ってる？

そう思って取り出すと。

『なーくんのこと気にかけたってな！ ジェル』と書かれてた。

ジェルくん……一般リスナーになにを求めてるの。

しかも連絡先まで！！あの人ピュア過ぎない？

人を疑って！！少しは人を疑うことを覚えさせて！誰か！

てかいつこんなの入れたの！？

私はそれを畳んでポケットに入れた。

はぁ……。

まだ貴之さんにだって謝れてない。

酷いこと言ってごめんなさいって。

「お父さん」という言葉すらも言えてない。

そんな私が今、幸せになんてなっていいわけがない。

貴之さんはきっと許してくれるけど……。

私はまだ踏ん切りがつかない……。

もしものことを考えると……。

「だから嫌なんだ」

彼のことを頼りにするのは……。

このマンションとの契約だってほんの数年なのに。

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