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独白 ページ1

私が片想いしていた少年は、カネダといいました。

彼は多分、私になど興味は無かったでしょう。



「あ…あの!…君…これ…」
「え?」
なけなしの勇気を振り絞り、渡したのは一枚のプリント。
「さっき…落としましたよ…」
元々コミニュケーションが苦手で、この程度でも声が震えてしまう。
そんな自分がとても憎い。
「あ…ありがとう…ございます…」
"カネダ"と呼ばれた少年ははプリントを受け取ると踵を返して友人らしい少年と路地へ消えていった。
言いようのない達成感と嬉しさが湧いてきて自然と口元が歪んでいく。
嬉しい、彼が私なんかに反応してくれた。
嬉しい、彼が私なんかに反応してくれた。

彼を知る人は彼を「暗い」だとか「陰気」だとか言っていた。
私はそうとは思わない。
だって…

彼は私なんかに反応してくれた。


今思えば、もう少しで戻れたかもしれないのに。
この気持ちを閉じ込めておけたのに。
私はなんて愚かだったんだろう。


渡せなかったバレンタインチョコレートを1人で食べて渡した気になったふり。
上手くかけたラブレターをびりびりに破いて渡した気になったふり。
こっそり撮影した写真を見てそこに彼が居るような感覚になったふり。
話す練習をし上手く話せるようになったふり。
そうやって、私は日常を嘘で塗り固めていった。

気づけば、私はカネダ君に関するモノを集めていた。

知らぬうちに落としたペン。
艶のある綺麗な黒い髪の毛。
剥がれかけの名前シール。

学校も違うのに、話したことなんて無いに等しいのに。
ひたすら彼に関する情報を探った。

現実と理想のジレンマに悩み、何度も何度も手首や腕に傷をつける。
それでも何も変わらない。

何故何故何故何故?

赤い色が見える、チカチカと光る赤い色…




私はどうやら大量出血で搬送されたようだ。
病院の無機質な白色が眩しい。
腕には同じ色の包帯。
白色の下には綺麗で汚い赤色がある。
親のすすり泣く声が聞こえる。
ああ、私はなんて馬鹿だったんだろう。
あんなことで彼が振り向くわけが無いじゃないの……
私は、小さく自嘲の笑みを浮かべた。


それっきり、私は彼のことを探るのはやめた。
集めたものは燃やしたり、返せるものは、彼にばれないように返した。
きっともう、彼と関わることは無いだろう。

動悸→



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設定タグ:ライチ☆光クラブ , 夢小説 , カネダ   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
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レル(プロフ) - とても面白かったです!続き頑張ってください(*´∇`*) (2015年2月21日 8時) (レス) id: 26043cac8c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:らの | 作成日時:2014年9月26日 22時

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