痛覚_ 3rd_【僕のヒーローアカデミア】 (ページ8)

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“秘密”

この言葉を発して以降、彼女が何かを言うことは無かった。

しかし、それに反するように教室内の明るい声たちは騒がしさを取り戻したようだった。

暫くの沈黙が続き、やけに騒音が耳に響く。
声の内容なんてこれっぽっちも入ってこないのはきっと、自分の心臓の鼓動の方が何倍も大きいから。

『(あぁ、たぶん…)』

__________________嫌われたかなあ

友達が傍にいなくても大丈夫なんて思ってたけど、とんだ間違いだったようだ。人から嫌われるってこんなにも苦しいものなのか。

緊張した時に感じるような鼓動が、鋭いものに変化した。

ごめん。ごめんね、お茶子ちゃん。

誰かを信用することが難しいんだ。

利害だけで誰かを推し量る自分が酷く情けなくて、苦しくて、腹立たしいんだ。

でもね、大丈夫。

この気持ちも、目も当てられないような醜い言葉達も、全部。

全部私の中で塞ぎ込んで、ねじ伏せて、蓋をして誰にも見えないような場所に

「＿＿＿＿＿＿＿嫌いになるわけないやんっ！！」

今まで聞いたことの無い悲痛の声が彼女から発せられた事に気づいたのは、普段の麗らかな表情からは想像も出来ないくらいに顔を歪めているのを見てからだった。

クラスメイトの視線が私達に集まる。

『…聞こえちゃったか』

曖昧に笑って誤魔化した。

否、本当は私の中の本音を聞いて欲しかったのかもしれない。

ていうか、態とこんな事するなんてとんだかまってちゃんか私は。

「Aちゃんのこと簡単に嫌いになんてなれんよ。いつも声掛けてくれるし、励ましてくれる。困った事があったらすぐに助けてくれる。遊びにだって誘ってくれて、うちの我儘も嫌な顔せずに付き合ってくれるやんか。それに、

それに…、

＿＿＿＿＿最近のAちゃんは、なんか辛そうや」

『！』

「うちら出会ったばっかやし信用しきれんのは十分分かるよ。でも、烏滸がましいかもしれんけど、」

少しくらいは頼って欲しい。

眉尻を下げたお茶子ちゃんが静かに笑っていた。