痛覚_ 3rd_【僕のヒーローアカデミア】 (ページ7)

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『…』

ゆっくりと少し俯きながら目を瞑る。

今、お茶子ちゃんに話しても何も解決することはまず無いだろう。私の気分が少しばかり晴れるだけだ。しかしそれは、ただの自己満足のためだけの行動になり堕ちる。そんな事にお茶子ちゃんを利用していいわけがない。

そういえば、彼女に記憶が無いという話をしただろうか。その前提を知らなければそもそも話す意味もない。
否、もし知らなくてもいつかは知ることになるだろう。誰かから聞いたりして。まあ知るのがいつになるかは分からないが。

もしも、記憶が無いのを知っていたとして。

私の母親が失踪中のヒーローだと知って、父親も母親も何らかのトラブルに巻き込まれてるかもしれないと知って、私だけが、平和に生きていると知って、

彼女は、みんなは、何を思う？

知ってどうする？

何かヒントになることを教えてくれる？

誰か解決してくれる？

私が抱えてるこの葛藤に、正しい答えをくれる人はこの中にいる？

こんな刺々しくてどす黒い言葉たちを、ただひたむきに、純粋に、ヒーローを目指している彼等に投げつける勇気が私にはなかった。否、無くてよかったのかもしれない。

『秘密』

目を細め顔を上げた私は、人差し指を唇に置いた。

いつかの大事な約束を、大事な人としたときのように。