その男、公安委員につき②【ヒロアカ】 (ページ42)

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　マイク先生と相澤先生のやり取りを聞き終え、混雑が予想される屋台付近の上空へ向かうと、スマホが震えた。

　その場で羽ばたきながらディスプレイを確認すると、相澤と表示されていた。通話を始めるボタンをタップし、スマホを耳に当てて言葉を掛ける。

「お疲れ様です。カイトです」
「……お前、何した？」

　心なしかいつもより低いトーンで相澤先生が聞いてきた。全く身に覚えがないため、俺は困惑しながら言葉を返す。

「……？何のことですか？」
「ヒーローネットワークに、お前のこと書かれてるぞ」

　ヒーローネットワークとは、プロヒーローのみがアクセスできるサービスだ。全国のヒーローの活動報告や、便利な個性を持つヒーローに協力を申し出ることができる、といったものだ。

　確か掲示板機能のようなものもあったはず。俺はアクセスできないから詳しくは分からないが、啓悟さんが前に言っていたような気がする。

「悪口でも書かれてました？」
「逆だよ。公安のカイト、話してみたらいい人だったって話題になってるぞ」
「……ああ、なるほど」

　そう言えば、休憩室を出た時も声を掛けられたな、と思い出し、言葉を続ける。

「今回の警備を通して、ヒーローとの交流が増えたんですけど、いざ話してみたら良いヤツで気軽に話せる、みたいな話が広まったっぽいです」
「そういうことか。まあ、何もしてないならいい」

　俺が何もしていないと分かったからか、先生の声のトーンが少し上がった。

「俺が何かするみたいな前提、やめてくださいよ。あ、相澤先生、昼飯一緒に食いませんか？」
「飯はあまり食わん。時間が勿体ないからな。ゼリー飲料が合理的だ」
「出た合理的……」

　警備にあたっている他のヒーローを誘おうと思い、少し拗ねたような口調で言葉を続ける。

「じゃあ誰か誘うのでいいですー。失礼しまーす」
「は、おい待――」

　先生の返事を待たずに通話を切り、屋台から少し離れた所でゆっくり降下してスタッと着地する。

「昼飯何食おうかな。ってか誘えそうな人誰かいるかな」

　屋台付近へ向かいながらそう呟くと、後ろから声を掛けられた。

「アレ、鳶嵩リスナー？！」

　今日は呼ばれるはずのない苗字で呼ばれ、ドキリとしながら声がした方へ振り返ると、すぐ近くにマイク先生が立っていた。

　俺は小声で、「ちょっとこっち来てください」と言いながら先生の腕を引っ張り、人がいないところへ早足で向かう。