その男、公安委員につき②【ヒロアカ】 (ページ31)

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　深く息を吸って、話を始める。

「先日現れた脳無のことを、死柄木弔は"改造人間"だと言っていました。実際に戦闘をしたイレイザーヘッドとオールマイトは感じたと思いますが、常軌を逸した素早さとパワーを持っていました。

　更に、ショック吸収の個性と超再生の個性を持っていました。まるで、オールマイトと戦わせるためだけの存在のように感じました」

　更にうるさくなる心臓を落ち着かせるため、もう一度深呼吸をする。

「……個性を与えることが出来る人物と、人体改造を行う人物に心当たりがあります」

　そう言うと、オールマイトと塚内警部が少し目を見開いた。

「6年前、オールマイトによって倒された、オール・フォー・ワン。そして、オール・フォー・ワンがドクターと慕う男です」
「なっ……！でも彼は確かにわたしが倒したはず……！」

　オールマイトの言葉に対して、俺は冷静に言葉を続ける。

「俺はその1年後、今から5年前に、オール・フォー・ワンと会っています。……その時俺は、ドクターに身体を弄られました」

　そう言って制服をガバッと上げ、胸部の中心に残っている"改造痕"を見せる。椅子に座る4人は、目を見開いていた。

　そっと制服を下ろし、話を続ける。

「俺の両親は、2人とも無個性でした。当然のように、俺のことも無個性だと思っていた。俺が3歳の誕生日を迎えた日、今まで何もなかった体に異変が起きました。

　背中がミシミシと音を立て、翼が生えた。指が取れそうな感覚に陥りながら、それは爪へと変形した。あまりの目の痛さに蹲り、ふと顔を上げると、数百m先にいる人の顔がはっきりと見えた。

　両親はそんな俺を気味悪がり、俺を外へと連れ出して『ここにいろ』と言って姿を消しました。家から少し離れたところで体を震わせていると、ある男性が声を掛けてくれました」

――

　まだ幼い俺は、恐怖に駆られながらその場に蹲った。空は暗く、道行く人が俺の方を見てヒソヒソと話している。

　そこへ、スーツ姿の男性に声を掛けられた。

「君、1人ですか？ご両親……パパとママは？」

　俺は声がする方へ顔を上げ、小さく口を開く。

「おれのこと、きもちわるいって……ここにいろっていわれて、きのうからもどってこない……もうおれは、パパとママのところに、もどれないのかな……」

　涙を浮かべながらそう言うと、その人は俺の目の前で屈んで視線を合わせ、優しく声を掛けてくれた。