その男、公安委員につき②【ヒロアカ】 (ページ19)

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「しかし、一歩間違えば、容易に人を殺せる、行き過ぎた個性を個々が持っていることを忘れないでください。

　相澤さんの体力テストで、自信の力が秘めている可能性を知り、オールマイトの対人戦闘訓練で、それを人に向ける危うさを体験したかと思います。

　この授業では、心機一転、人命の為に個性をどう活用するかを学んでいきましょう。

　君たちの力は、人を傷つけるためにあるのではない。助けるためにあるのだ、と、心得て帰ってくださいな。以上、ご清聴ありがとうございました」

　13号先生の話が終わると、拍手が喝采する。周囲から「素敵！」「ブラボー！」と褒めたたえる声が聞こえる。

　それを遮るように相澤先生が口を開いた。

「よし、そんじゃまずは――」

　そう言って先生がエリアの方を指すと、途端にライトが消えた。

　噴水の水が何度かバシャバシャと跳ねたかと思えば、途端に黒いモヤが現れた。

　相澤先生はその気配を察知し、噴水の方へ視線を向ける。黒いモヤは次第に大きくなり、その中から手が見え、人の姿が出てきた。

　――体に幾つかの手を付けた、男の姿が。

「一塊になって動くな！ 13号、生徒を守れ！」

　相澤先生はそう言って臨戦態勢に入る。みんなはまだ状況を読めていない様子だ。

　大きく広がった黒いモヤから、次々と人の姿が出てくる。

　嫌な汗が背中を伝う。

「なんだアリャ……また入試ん時みたいな、もう始まってんぞパターン？」

　切島がそう言い、緑谷も動こうとするが、間髪入れずに相澤先生が口を開く。

「動くな！あれは……敵(ｳﾞｨﾗﾝ)だ……！」

　そう言って、先生はゴーグルを装着する。

　目の前の光景に、誰もが息を飲む。

「……やはり先日のはクソどもの仕業だったか」

　相澤先生は気づいたようだ。あの騒動が、ただのマスコミによるものだけではない、と。

　俺はサングラスをかけ、ピアスにそっと触れる。

「はあ？！敵(ｳﾞｨﾗﾝ)？！バカだろ、ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホすぎるぞ？！」

　切島がそう言い、八百万が13号先生に「侵入者用センサーは？」と尋ねる。

　13号先生は、「もちろんありますが……」と言葉を濁すが、警報などは鳴っていない。

　それが十分すぎる答えだった。