その男、公安委員につき②【ヒロアカ】 (ページ16)

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　手を合わせ、「いただきます」と言って箸を進める。

「んー、うまい」
「A、一口交換しない？」
「いいよ」

　俺はそう言って啓悟さんの前に皿を移動させる。啓悟さんは、「うん、美味しい」と満足そうにしていた。

　そして今度はニヤリと笑みを浮かべ、フォークを俺へと近づけてくる。

「A、口開けて」
「え、なんで」
「いいから、ほーら」
「いや、自分で食べれる――」
「ほら、口、開けて？」

　そう言いながら、首を少し傾けて少しの圧を込めて笑みを浮かべてくる。

　この人は引くということを知らない。俺は諦めて口を開けた。

「あ……ん、うまい」
「それはよかった。もう一口いる？」
「いや、だ、大丈夫」
「そう？残念」

　啓悟さんは会長に呼ばれたらしく、途中で席を立った。

　それぞれ食べ終えて会計へ向かうと、既に啓悟さんが済ませてくれていた。

　外に出ると、マイク先生が口を開く。

「No.3ヒーローは違うなぁ！んじゃ、帰るか！」
「鳶嵩、お前どうやって帰るんだ？ホークスと来たんだろ？」
「あー……適当に帰るんで大丈夫です」
「こんな時間に生徒を放っておくわけにはいかない。車で来てるから乗ってけ」
「え、いや、本当におかまいなく……」
「いいから」

　先生の圧に負け、「お願いします」と頭を下げた。

「イレイザー！？もしかしなくてもソレ俺の車だよな？！」
「一人増えても変わらねぇだろ」
「ン～！そうだけどよ！」
「マイク先生、すみません……」
「いいってことよ！」

　マイク先生の後について車へ乗り込む。
　相澤先生は当然のように助手席に座っていた。

「すみません、お願いします」
「気にすんな！家どの辺だ？」
「ヒーロー公安ビルの方にお願いします」
「オッケー！」

　マイク先生がそう言い、車が動き出した。

　外を眺めていると、ふと前から声が掛けられた。

「そういや鳶嵩、怪我の方は大丈夫なのか？」
「ああ、大丈夫です。相澤先生は？」
「問題ない。そもそもお前より動けてたからな」
「……そうでしたね」

　フッと笑う先生に少しむくれていると、マイク先生が話に加わってくる。

「え、なに、何の話？！」
「俺と鳶嵩の秘密だよ。な、鳶嵩」

　そう言いながら、相澤先生がニヤリと笑ったのがミラー越しに見えた。

　俺は静かに肯定することしかできなかった。

　公安の近くのコンビニで降ろしてもらい、俺の濃厚な2日間は幕を閉じた。