その男、公安委員につき②【ヒロアカ】 (ページ8)

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　目の前に建物が迫り、慌てて腰を捻って左肩で衝撃を受ける。

「うﾞっ……」

　壁にもたれて、何とか立ち上がる。

　距離を詰めてくる敵(ｳﾞｨﾗﾝ)を前に必死に思考を巡らせていると、声が聞こえた。

「鳶嵩！跳べ！」
「っ……！」

　その声に反応し、攻撃が届く直前で思い切り地面を蹴る。その攻撃は空を切り、敵(ｳﾞｨﾗﾝ)に捕縛布が巻き付くとそのまま吹き飛ばされていった。

　今度こそ動く様子はなかった。

　遅れて警察の姿が見え、敵(ｳﾞｨﾗﾝ)を拘束していく。

　イレイザーがこちらに駆け寄りながら口を開く。

「大丈夫か」
「っ、はい。助かりました」

　端末を操作して、ホークスに電話をかける。
　直ぐに声が聞こえてきた。

「カイト、首謀者の姿が見えた。まだ動ける？」
「……少し時間が欲しい。ちょっと休みたい」
「5分でいける？それ以上はこっちも厳しい」
「分かった」
「先に位置情報送っとく。頼んだよ」
「了解」

　通話を切り、俺は天を仰ぎながらその場に倒れ込む。

「おい、鳶嵩――」
「――大丈夫です。ちょっと休んでるだけ」
「……そうか」

　寝転がりながら端末を操作して、送られてきた位置情報を確認すると、やや離れた所に黒色と黄色の丸印が集中していた。

「先生、4分経ったら声かけて下さい」

　返事を待たずに俺は目を閉じ、体を休める。

　少しの間そうしていると、「4分経ったぞ」と声を掛けられる。

「ありがとうございます」

　そう言いながら立ち上がり、翼を広げる。

　まだ若干の痛みや疲労はあるが、先ほどよりは良くなっていた。

「さっきホークスが言っていた場所に敵もヒーローも集まってます。俺が連れてくんで、眼休めててください」
「分かった、頼む」
「はい」

　イレイザーを抱え、先ほど確認した場所へ向かう。

　少し飛ぶと、その先にホークスの姿が見えた。

「ホークス！」
「来たね。多分、敵(ｳﾞｨﾗﾝ)の大半が発動型と変形型の個性だと思う」

　眼下に目をやると、遠距離個性持ちのヒーローが敵(ｳﾞｨﾗﾝ)を抑えていた。

　ホークスがそのまま言葉を続ける。

「イレイザーさん、敵(ｳﾞｨﾗﾝ)にだけ個性を発動させてください。カイトはその隙に、あのデカいのをお願い」
「分かった」

　言葉を返すと、イレイザーに赤い羽根が近寄り、手から離れた。

　直ぐに急降下すると、暴れ狂う敵(ｳﾞｨﾗﾝ)たちの個性が消えた。