その男、公安委員につき②【ヒロアカ】 (ページ24)

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　起き上がろうと上体だけ起こすと、水面に緑谷と蛙吹、峰田が身を潜めているのが見えた。

　すると目の前に死柄木弔がしゃがみ込んだ。死柄木の顔に付いている手の向こうから、声が聞こえた。

「よお、鳶嵩A。相変わらず元気そうだな。言いつけ通り、誰にも言わなかったようだな。おかげで侵入出来たよ」

　死柄木がそう言い、クククと笑うと、今にも死にそうなほどボロボロな相澤先生から小さく声が聞こえてきた。

「……鳶嵩、それは、どういうことだ」

　死柄木が言葉を続ける。

「イレイザー、お前は気づいたろ。先週のマスコミの騒動は俺たちの仕業だと。お前らが悠長にマスコミの相手をしている時、コイツだけが俺に気づいて、声を掛けてきた」
「……あの時、か」
「その時に忠告したのさ。『また今度、大勢を連れて再び来るが、誰にも言うな』ってね。コイツは賢いよ。俺がどういう人間かを察して、周囲への被害を案じて誰にも言わなかった。そのおかげで侵入出来たって話さ」
「……そうか」
「そこでだ、鳶嵩A。今日はお前を連れ帰ることにするよ」

　死柄木弔は、そう言ってニヤリと笑みを浮かべた。

　俺の中で、何かがプツリと切れた。

「……死柄木弔」
「なんだ？」
「俺が誰にも言わなかったのは、俺1人なら何とかなると思ったからだ」

　愉快に笑う死柄木を睨みながら全身に力を溜め、起き上がると同時に死柄木を蹴り飛ばす。

　すかさず相澤先生にまたがる巨体の後ろに回り込み、蹴りを一発入れて注意を引く。

　巨体が俺に拳を振るより早く、相澤先生を左肩に担いで軽く跳ね、翼を広げながら叫ぶ。

「蛙吹！ 2人を掴んで跳べ！」

　蛙吹がすかさず反応し、2人を舌で巻き付けながら水面から出てくる。空いている方で蛙吹を抱え、芦戸たちの所へ全力で飛ぶ。

「佐藤、障子、コイツらを頼む。相澤先生がやばい。なるべく動かすな」

　そう言って返事を聞く前に、こちらに向かってくる黒霧と巨体目掛けて羽ばたく。

　爪に変形させ、空中で身を翻して黒霧と巨体の肩に爪を食い込ませ、死柄木の方へ投げ飛ばす。

　すかさず急降下しながら、口を開く。

「会長、見えてるか」
「……なんでしょう」

　ピアスから声が聞こえてきた。

　電波は妨害されていると言っていたが、公安の最先端技術には及ばなかったようだ。

　地面に降り、黒霧と巨体の攻撃を躱しながら俺は言葉を続ける。