fruit ページ4
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時刻は22時24分。
店に流れる音楽が少し小さくなり、鮮明に彼の
柔らかくて落ち着いた声が耳に入ってくる。
何か知らせがあるとき、決まって最初に意地悪な表情を浮かべて聞いてくる。
それが嬉しい事であっても
相手がどんな反応をするのか、どんな言葉を返してくるのかすごく気にしている。
意地悪な顔を浮かべた後に垣間見える切ない表情が
彼の繊細な心を覗かせる。
「海外って、どれくらい？」
白く綺麗な指がグラスを傾けて、真っ赤な液体も傾く。
「1年に数回は帰ってくる。」
"けど、その日のうちにすぐ帰る。"
ボソっと呟いたその言葉は、向こうで本格的に暮らすことを意味していた。
「だから、和も一緒に来ないか？」
コトンと音を立てて置かれたグラスの中の液体が
ぴちゃっと揺れた。
「え？…俺は大学もあるから、行けないよ。」
心臓がドクンと音を立てる。
「そんなの、向こうに転入すれば幾らでも大学なんていけるだろ？」
「そんなお金…ないですよ。」
「金なんて気にしなくていい、和さえ良ければ
俺、本気だから。」
海外での仕事が始まったら、もう松本さんは店に来る時間さえ無いかもしれない。
そう思って覚悟を決めて俺を誘った。
ただの客と店員の仲
その関係を崩したとき、果実の甘みと酸っぱさが入り混じる。
「少し、考えてくれないか？」
" 返事はすぐじゃなくていいから。"
柔らかく微笑んだその瞳に、
「また来て。」
そう返した。
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pooh1221(プロフ) - 今、大学1回生のものです。中学３年の頃作者さん本人から占いつくーるの存在を教えてもらいました。今でもよく作者さんの小説を読ませていただいております。本当に文章表現が豊かで頭が上がりません。作者さんの更なるご活躍をお祈り申し上げます (2020年2月13日 16時) (
レス) id: 05dd12fe89 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あんぱん | 作成日時：2019年11月11日 21時
