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「 何も…ないよ、
ほら、熱あるんだから横になってて?」
目は見れなかった。
上手く、笑えてたかな。
スティックに何も思い出がないって言ったら
嘘になる。
むしろ、私の人生の中で一番の思い出。
あの人は…ドラマーだった。
何よりもドラムが好きで まっすぐな人だった。
友達も多くて面倒見も良くて
勿体無いくらい素敵な人だった。
…なんて、直接言ったことはなかったけど。
物心つく前からずっと一緒で
小さい頃のアルバムには必ず隣にあの人がいて。
好きなものも嫌いなものも
部屋のどこに何があるかもお互い全部知ってて。
“ 好き ” とかいう恋愛感情より
ずっと一緒にいるんだろうなって思ってた。
あの人しか、考えられなかった。
なのに…
突然会えなくなった。
最後の会話が何だったかもわからない。
普通の、普通の1日だった。
最後にあの人を見たのは病院で。
私は 葬儀にも出ず、
別れの挨拶もせず、
家から、学校から、街から、逃げた。
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作者名:n a g i. | 作成日時:2016年2月19日 19時