何とかしてよ伊沢さん

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｢山本さん、ありがとうございました。｣

｢いえいえ〜似合ってるよそれ笑｣

「そうですかね？笑」

山本さんの優しい笑顔にふふっと釣られて笑うと伊沢さんと目が合った。
あ、鍵返さないと。
一生持ってていいって言うならありがたく持ってるけど、そういうわけにもいかないし。

｢伊沢さん、サンドイッチありがとうございました。あとこれ返しますね。｣

｢おー、あれで良かった？｣

｢サンドイッチ好きです私｣

メガネのフレー厶と、顔の隙間から素敵な笑みを覗かせる。
伊沢さんは座ってるから、本人は意識してないんだろうけど必然的に上目遣いみたいに。
色気だ。色気の魔術師だ。
あぁ、それやばいです伊沢さん。

その時、思わぬタイミングで食いついてきたのは山本さんだ。

｢昨日Aちゃん伊沢さんの家泊まったの？｣

｢あ、はい。送ったあとそのまま寝ちゃって。｣

｢ふーん？｣

いつもニコニコ山本さんにしては珍しい表情を、一瞬だけ見た気がする。
そう思ったのもつかの間、山本さんはすぐにいつもの笑顔に戻った。

｢楽しそう、今度僕んちおいでよ笑｣

｢えっいいんですか？笑｣

｢え、なになに俺が行っちゃうよ？｣

｢歓迎しますよ〜｣

あはは、なんて平和な空気がオフィスに流れる。
ああこれこれ。伊沢さんとどうにかなっちゃいたいんだけどこの空気もなんだか壊し難いもののように感じる…。

｢よし、仕事しますかぁ。｣

投稿する動画は既に何日か分、ふくらさんと私の2人で作ってあるんだけどストックは多いに越したことないしね。
気合い入れてこの間の続きから作業をスタートさせる。
ちなみに伊沢さんの横が私の定位置。
山本さんは伊沢さんの私の反対側に位置する隣。
向かいあわせの席には休日ってことで誰も座ってない。
だから、ファミレスで6人席をこういう使い方してる人がいたら笑っちゃうような位置関係に今私達はいる。
なんて、パソコンあるからそんな奇妙さは傍から見ても分かんないんだけどね。
この状況を客観視する人も居ないし。

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