1年後の約束 (ページ2)

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第51話ページ2

「こんばんは」
オフィスに入るとちらほらと人影が見える。
「あ、御山さんごめんねぇ、夜遅くに……」
「いいんです」
「山本君、仮眠室ですか？」
「うん」
静かに扉を開けると丸まった布団が見える。福良さんの方に少し会釈して、中にゆっくりと入っていく。
「山本君？起きてる？」
返事は無いので寝ているのだろう。
顔色はそこそこ、タオルを変えて様子を見る。
苦しそうにはしていないし、このまま寝ていれば大丈夫だろう。
そっと部屋をあとにすると、福良さんが心配そうにこちらを見つめてきた。
「山本君、大丈夫そうですよもう少し寝れば熱も下がると思います。」
「山本はこのまま泊まらせようと思ったんだけど……」
「じゃあ、私残ります」
「ダメだって！御山さん疲れてるでしょ？」
肩に手を置いて私を止めようとする福良さんの腕をゆっくりと下ろす。
「明日オフなので大丈夫です」
不安気な目を見つめると折れたのか数回ゆっくりと瞬きをした。
「無理はしないでよ？」
「伊沢さんじゃないので」
そういうと福良さんは少し笑って俯いた。
「……俺らのこと頼りにしてないのかな」
漏れ出たような本音の言葉に少し戸惑う。
あのことについては頼りにはしていないだろう。言えないんだから。
「……なんでもない。ありがとね」
そう言って荷物をまとめてさっさと帰ってしまう福良さんの背中をじっと見つめることしか出来なかった。

夢を見た。
内容は覚えていない。
あれから、少し様子を見て起きそうにないのでソファに座って目を閉じると眠っていた。
目をゆっくりと開けると彼がそこに居た。
「おはよ、山本のことありがとね」
タイピングしながらそう言って微笑む。そんな彼に頷いて立ち上がる。
彼の言葉が頭を反響してぐるぐると回る。
それを見ないように目を瞑った。
作った珈琲をカップに淹れて机に戻ると彼がちらりと私を見る。
心音が聞こえる。
会いたくないと思っていたのに、会うと自然と彼を見てしまう。
もう、2月か。
まだ、夜が長い。夜が明けてしまう頃には私は変わってしまっているのだろうか。
熱い珈琲を口に含むと少し苦い。砂糖を継ぎ足していると彼がだらりと背もたれに寄りかかる。
「ねぇ、今年はチョコくれんの？」
「……欲しいんですか？」
「ん〜欲しい」
そう言って微笑む彼を横目で見てからまたひとくち。ちょっと甘くしすぎたかな
「考えておきます」
「期待してる〜」
「しない方がいいかもしれません」
彼はまだ、笑う。