第39話 ページ40
彼が入院すると聞いたのは彼女からだった。
やけに落ち着いた様子で、真剣に無表情でそんなことを言うものだから皆返す言葉が見当たらず、とりあえず「うん」と返すしか無かった。
「こうなるとわかっていました。」とでも言うように話を進める彼女に違和感を抱いていたが誰も口には出さなかった。
言っちゃいけない。そんな空気が流れていた。
「山本さんは何持っていきますか？」
「ん〜とりあえず早押し機かなぁ」
今日はそんな彼女に連れられて我らが社長のお見舞いに行くところだった。
彼女が言うには彼は何ともないらしく、疲労の延長線で体調が不安定なだけらしい。すぐに退院できるようになると言っていた。
「それにしても、アイツ無理しすぎだよなぁ」
「入院するまで黙ってるって……」
彼から頼られていないことが少しだけ悲しくて悔しくて、愚痴にならない愚痴を吐く。
それでも、彼の好きな物を持っていく僕らは既に戻れないほど、彼に酔っている。
数回ノックして病室に入ると彼と彼女が話している。楽しそうに話す彼とそれを聞く彼女。
2人の顔には笑みが浮かんでいた。
初めて見た彼女の自然な笑顔に皆目を奪われた。
「あ、よっ！来てくれてありがとう」
僕らの方へゆっくりと振り返った彼女は今までに見たことがないほど優しい顔をしていて誰もが目を奪われた。
まるで別人の彼女に戸惑いながらも部屋の中に入る。
それでも彼は変わらない。
入院しても彼は彼で、何が変なのか分からない。また繕っているのだろうか。
「ほんと、無理すんなよ？」
「わかってるって」
「わかってないからこうなってるんじゃないですか！」
「それもそうだな」
はぐらかすようにふざける彼にふっと頬が緩み、緊張も一気に解ける。
変わらない笑顔が眩しくて、いつものように僕らも笑う。
それから少しだけクイズをして、予定もあるので席を立つ。
「もーいっちゃうのかよぉ」
「また来るから。」
「……じゃあなぁ」
寂しそうに手を振る彼に手を振って隣の彼女を見ると、彼女は軽く僕らに会釈した。
つられて僕も会釈して扉を静かに閉める。
「元気そうだったな」
「退院したら皆でどっか行きましょうよ！」
「それもいいなぁ」
病院の廊下をこれからの話をしながら歩き、ロビーを出る。
「なんか病院って緊張しません？」
「分かります！なんか張りつめた感じ……」
こうちゃんも同じだったようで、2人で外の空気を思いっきり吸った。
冷たい風がツーンとして涙が出た。
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けろすけ(プロフ) - ありがとうございます!!嬉しいです！これからもマジで頑張ります！ (2020年4月23日 11時) (
レス) id: 38524bae7d (このIDを非表示/違反報告)
hina(プロフ) - コメント失礼します。いっつも楽しみにしてます。描写がめちゃめちゃ好きで読んでると思わず「儚ねぇ,,,」ってなります。応援してます！これからも頑張ってください！ (2020年4月23日 1時) (レス) id: eee79864a1 (このIDを非表示/違反報告)
けろすけ(プロフ) - すずどらさん» コメントありがとうございます!!良かったです!!勢いで投稿しているので、消したり作り直したり沢山すると思いますが完結できるように頑張ります！ (2020年4月21日 15時) (レス) id: 38524bae7d (このIDを非表示/違反報告)
すずどら - 初コメ失礼します。良いですね、涙腺が緩みっぱなしです。izwさんと夢主ちゃんの暖かい風景に隠れた切ない秘密がぐっと来ます。izwさんがいなくなったらメンバーは号泣しそうだな、なんて妄想しています。勝手に語ってすいません。これからも頑張って下さい。 (2020年4月21日 11時) (レス) id: 60ae3ef212 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：けろすけ | 作成日時：2020年3月20日 13時
