第30話 ページ31
「はいどーぞ」
コロコロと机の上を転がって私の前で止まった飴玉。転がってきた方をむくと、山本君がそこで笑っていた。
「僕も喋ってみたくて」
そう言ってぴょんぴょんとソファに座る。
「なんか、喋るのは初めてじゃないですか？」
「そうですね。」
「タメ口でいいですよ〜？」
そうゆるゆると言う山本君にはあの言い訳は使えない。仕方なく慣れないタメ口を使うことにした。
「ん〜何について話そうかなぁ。……ふつーに気になること聞いてもいいですか？」
「いいよ」
「伊沢さんとどういう関係？なんですか？」
予想はしていた。山本君は素直だから、きっと聞いてくると。だけど、なんて答えるかはまだ決まっていなかった。……嘘をつこうか。
「…………別に、なんでもないよ」
「え〜！そんな訳ないですよ！だってなんか…………なんか、違うもん！」
曖昧な山本君に手元のペットボトルを握りしめる。なんて答えればいいだろうか。
「ずるい」
後ろから聞こえた低い声に2人とも身体をびくつかせる。
一斉に振り返ると彼が口を尖らせながら立っていた。
「俺もタメ口がい〜い〜」
ソファの背もたれに寄りかかって駄々をこねる。困った顔をすると、彼も困った顔をする。
「伊沢さん！御山さんとどんな関係なんですか？」
「…………なんでもないけど。何？」
軽く答えた彼に肩の力がふっと抜ける。
口を尖らせ、彼を睨む山本君を片手であしらいながら薄らと微笑む彼は頭を荒く撫でられ、不貞腐れている山本君を見つめていた。
その目が異様に優しくて悲しそうで目を奪われた。
山本君がくれた飴玉を開け口に入れると甘いいちごミルクの味が口に柔らかく広がる。
先程まで飲んでいたお茶の味が恋しくなって手を伸ばす。手に取ったペットボトルの蓋を開けようと思ったが、それを躊躇った。
甘くて優しい柔らかいこの味が目の前で微笑み、仲間を思っている彼に似ていると思ったから。
苦い苦いペットボトルをそのまま机に置いた。
「……伊沢さんも飴いりますか？」
「いるいる。」
「いちごミルクと抹茶どっちがいいですか？」
「いちごミルク……いや、抹茶で」
緑色の包み紙が手から手へ渡される。
新緑より渋いその色が私には懐かしかった。
「珍しいですね。抹茶なんて、それ結構苦いですよ。」
「……そーいう気分なの。」
そう言って深緑色の丸い飴玉を彼は口の中に放り投げた。
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けろすけ(プロフ) - ありがとうございます!!嬉しいです！これからもマジで頑張ります！ (2020年4月23日 11時) (
レス) id: 38524bae7d (このIDを非表示/違反報告)
hina(プロフ) - コメント失礼します。いっつも楽しみにしてます。描写がめちゃめちゃ好きで読んでると思わず「儚ねぇ,,,」ってなります。応援してます！これからも頑張ってください！ (2020年4月23日 1時) (レス) id: eee79864a1 (このIDを非表示/違反報告)
けろすけ(プロフ) - すずどらさん» コメントありがとうございます!!良かったです!!勢いで投稿しているので、消したり作り直したり沢山すると思いますが完結できるように頑張ります！ (2020年4月21日 15時) (レス) id: 38524bae7d (このIDを非表示/違反報告)
すずどら - 初コメ失礼します。良いですね、涙腺が緩みっぱなしです。izwさんと夢主ちゃんの暖かい風景に隠れた切ない秘密がぐっと来ます。izwさんがいなくなったらメンバーは号泣しそうだな、なんて妄想しています。勝手に語ってすいません。これからも頑張って下さい。 (2020年4月21日 11時) (レス) id: 60ae3ef212 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：けろすけ | 作成日時：2020年3月20日 13時
